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リバース

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子どもの頃からずっと、波風立てず、目立たないように過ごしてきた
事なかれ主義でモヤシ的、そしてヲタク的な深瀬がこの物語の主人公。

大学を卒業し事務機の販売会社に就職して2年。
趣味と言えるようなものはまったくなく、
唯一、美味しいコーヒーを煎れることに心血を注いでいた深瀬は、
近所にできたコーヒー豆のショップで美保子と出会う。
そうして美保子は深瀬の人生初のガールフレンドとなるのだが、
その美保子の元に「深瀬和久は人殺しだ」という手紙が届く・・・

面倒や争い、場合によっては人目までをも避けて、
何事もなく生き抜こうと願ってきた
水を打ったように静かだった深瀬の人生に、
唐突に巨大な波紋が広がる。

ただのイタズラなのか?
殺人を告発する手紙の真意とは?
深瀬の過去に一体何があるのか?
誰がこの手紙を書いたのか?
どうして美保子のことを知っているのか?

湊かなえの小説には最後のオチに痛烈なカウンターパンチか、
もしくは強めの爆弾が仕込まれていることが多い。

それらは「どんでん返し」なんていうタイプのものではなく、
明らかに読者も巻き込まれる「自爆系」の時限爆弾で、
登場人物だけでなく、読んでいるこちらまで
とばっちりを受けるような種類の爆弾だ。

最後の1ページのためだけにすべての伏線が張られており・・・
いや、「伏線」という表現はこの場合すでに間違っているかもしれない。
なぜならそこまでの流れがすべて裏切られるように
思いもよらない完全な圏外から爆弾が投げ込まれてくるからだ。

ラストシーンに至るまでに、すっかり深瀬に感情移入させられており、
自分が登場人物と置き換わるような、
強制的に置き換えられるような状況で、最後の一行が突然爆発する。

他人事である以前に、小説の中の空想の話なのに、
我が事のように不快な気分を体験させられてしまう。

それほどに、最後の1ページまでの展開が超絶に面白く、
人物像が念入りに作り込まれた登場人物にすっかりと思い入れを持たされ、
その立場できれいな決着を願っていると、
それは突然に裏返し(リバース)になって砕け散る。

すっかりハマってしまった私は1日で読み終えてしまったほど
最後まで面白い本であることは確かだ。

だからこそ、最後の1ページの破壊力がスゴすぎる。

この破壊力になんとか反抗しようとしている自分に気づくと、
改めて自分はMではなくSなのだと自覚できたほど。

中でも『山女日記』のようなジ〜ンと胸を締め付けられるような
良い話が大好きな私なので、
ついそちら方面の結末を願って読み進んでしまうのだが、
そのおかげで余計に破壊力は抜群。

そういった小説もこういう裏切りのために書かれている
伏線なのではないかと勘ぐりたくなるほど、
湊かなえという小説家は作風のコントラストが強い作家さんであります。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ さて明日の土と雪と:は _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
クリント・イーストウッド監督の最新作であり、
久しぶりに自ら主演も務めた『運び屋』の感想です。
やはりイーストウッドの演技はシブい。シブすぎる・・・
  

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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

2019.07.25 | コメント(0) | トラックバック(0) |

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埼玉のへそ曲がり

Author:埼玉のへそ曲がり
オートバイと
スノーボード。
近ごろ波乗り。

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