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オリバー・ストーン監督作『ブッシュ』は
ジョージ・W・ブッシュ大統領を描いた、ほとんどコメディといっていい作品だが、
『バイス』は、そのブッシュ政権下で副大統領(Vice President)を務めた
ディック・チェイニーの半生を描いた作品だ。

大統領自身があれほど笑える題材になるのだから、
今作もまたハッキリとコメディだ。
だが、『バイス』がいまいち笑えないのは、
ブッシュがただの操り人形だったという“真実”だ。

ブッシュ政権時に9.11が起き、
アフガニスタンに侵攻し、その足でイラク戦争を始め、
イラクには大量破壊兵器などなかったという素晴らしいオチまでついた、
あのときの副大統領が主人公で、
もちろん今作で描かれるそれらのことはすべて真実。

それらを主導した張本人が実は副大統領で、
本来、大統領に何かあったときの安全装置としてしか機能しないはずの
副大統領というお飾りの存在が、
いかにしてすべての権力を掌握することができたのか。
という物語。

ただし、その時彼らが何を思ったのか、
彼らが何を目的としてその行動を起こしたのか?について
今作で描かれていることはすべて推測の域を脱していない。
あくまでも映画用に作られた脚本でしかない。

なので、今作の脚本が、観客をある結論へ“誘導”していることは確かで、
それを笑って受け流せるか、はたまた素直に受け取るのかによって
観終わった後の気分は180°違う。

つまり、最高の喜劇ともとれるし、
最悪の政治劇ともとれる。

ちなみに私には最悪の政治劇ととれた。
素直に脚本の誘導に従えたし、
個人的な悪意によって戦争が始められた以外の意図、
この戦争が国益になるということを想像することはできなかった。

そして今作が一番に問題視しているのは、
そういった政治を私利私欲の道具にする輩がいることの告発だけではない。
むしろそれを許している国民の無関心の方だ。

その無関心は、「テロとの戦い」や「リベラル」など、
分かりやすい政治目的の裏に隠された「油田」や「利益」など、
別の問題点への注視を削いでいる。
もっと言えば、様々な個人的な悪意を国民の関心から容易に逃がしている。

もちろんこれは米国に限った話ではない。
個人的な感想を言えば、
そもそも日本の政治家には世界的な影響力などほとんどないし、
ここまで性根が腐ってはいないような気もするが、
それにしても国民の無関心さで較べればメクソハナクソのレベルだ。

戦争が良くないことであるのは当たり前の話で、
それはイジメが良くない、格差社会が良くないと言っているのと同じで、
その“ありき”の結論だけを論拠に反対していては、
ここまで狡猾な悪意の前では簡単に論破され正当化されてしまうと私は思う。

9.11のNYのように、実際に日本が他国から攻撃されたとき、
私たちは戦争を止められるだろうか?
戦場が自国内ではないからと容認してしまわないだろうか?
反対するだけでなく、怯えるだけでなく、止める方法を模索しないこと。
戦争の目的が本当に国民の安全だけなのか?と政府を疑わないこと。
それがここで描かれる無関心だ。
そういった無関心を自覚する者にとって、
ハッキリと「耳の痛い」映画であります。

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こちらの肖像は任期中のディック・チェイニー本人。

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こちらがクリスチャン・ベイル演じる今作の中のチェイニー。
実にそっくりですね〜〜〜なんてコトが言いたいのではない。

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こちらは当時のラムズフェルド国防長官。
私、この人は良い人だとばかり思ってました。

クリスチャン・ベイル演じるチェイニーは、誘導する意図を持って、
そのまんま悪の化身としてスクリーンに映るが、
いま、実際のチェイニーの写真を見てあなたならどう思うか?

パウエル国務長官が自身の意に反して政権のために行動し、
黒人初の大統領になるとまで言われていた彼のキャリアが
そこで潰えたという話は、島国に住む私にも届いていたが、
ラムズフェルドも、チェイニーも、そういう人間には見えていなかった。

第32代大統領のルーズベルトが、車イスが必要なほどの
障害者であったことを当時の国民が誰も知らなかったという事は、
テレビの時代では当選できなかったであろう話としてよく語られるが、
これはその真逆の話だ。

比較的見た目の良い国家元首のいる極東の島国にも、
人気の高かった前首相の、とても見た目の良いジュニアが、
虎視眈々と次のタイミングを伺っているようだが、
そういうことも国民の無関心が生み出す虚像だとすら思えてしまう。

果たしてあのハンサムな二世議員は戦争を止められるのか?
これ以上の環境破壊を止められるのか?
私たちは無関心を止められるのか?

というわけで、私の無関心はこの映画によってかなり刺激されました。
アナタも是非、自身の政治への無関心を試しに、劇場へ足をお運びください。
(オススメ度:70)
  

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2019.04.12 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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