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I, TONYA

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1994年、リレハンメル オリンピック アメリカ女子フィギュアスケートの
代表選考も兼ねた全米選手権の練習後に、
当時一番の代表候補であったナンシー・ケリガン選手が、
何者かに膝を強打されるという信じられないような事件が起きた。

その世界を震撼させた「ケリガン襲撃事件」を主謀したとされたのは、
ケリガンの最大のライバルであったトーニャ・ハーディングであった。

今作はその舞台裏を追った物語。

もちろん、真相は今も闇の中で、
今作で事実として語られる内容や、
トーニャに肩入れされたともとれる考察の仕方も、
冒頭にテロップで記されるとおり、
そのことは制作者サイドも充分に理解していて、
かなり偏って描かれていることは間違いない。

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貧しい家庭で育ったトーニャは、4歳のときに
母親に無理強いしてフィギュアスケートの教室に通わせてもらう。
そして、たった半年習っただけで大会に出場し、年長者を退けて優勝してしまう。

それを機に、スケートに無関心だった母親も、娘の才能に荷担しはじめるのだが、
そもそも粗暴で暴力的な躾け方を繰り返すDVな母親であったため、
良い意味では強靱な精神を身につけながらも、
小さな心に重大なトラウマを背負いはじめてしまう。

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しかして、そんな状況が逆にバネとなって、
スケートの実力はメキメキと上達していく。
全米でも注目されはじめた17歳の時、
トーニャはその後結婚するジェフ・ギルーリーと出会う。

運命的な出会いであるワケなのだが、ジェフもまたDV男で、
歯車はすべて悪い方に流れていく種類の運命、
まさしく「運の尽き」であった・・・

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暴力夫ジェフとの出会い、
ジェフの友人で襲撃事件を実行犯に指示したとされるショーン・エッカートは、
トーニャのボディガードを自称する妄想癖のある男で、
そうした負の存在たちがトーニャの歯車をより一層悪い方に回していく。

といった事件の裏側をトーニャを中心に描いていくわけだが、
今作の中心にあるのはもちろん事件の真相ではない。

上流社会の住人にのみ許され、
どれほどアスリートとしての実力を備えていようとも、
豊かな家庭に生まれ育った淑女を象徴する存在でなければ
芸術点という点数を与えられない、
階級的で、封建的なフィギュアスケートというスポーツ。

母親の5番目の夫との間に生まれ、
貧困家庭で育った女性が、そんな世界に挑み、
様々な壁や重圧をはね除けるために暴力という力を選んだこと。

それは、肯定されるものでは決してないが、
だからといって一切の理解も共感も許されないようなことではない。
そんな、アメリカが抱える格差社会や貧困が生み出す様々な問題点を、
今作もまた暴いていると言っていいと思う。

もちろん、過去にあったとんでもない事実を、
のぞき見趣味で観ても面白いし、
アメリカという大国の裏側に潜む身近な悪夢を、
その完全な逆サイドで成功した大富豪が大統領である時代に
観ることの可笑しさを体験しても面白いと思う。
(オススメ度:もうレンタルできるし、80)

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ちなみに、
劇中いちいち「アメリカで最初にトリプルアクセルを飛んだ女性」と、
トーニャ・ハーディングを形容するが、
女性ではじめてトリプルアクセルを飛んだ選手は、
誰あろう日本の伊藤みどりさんだ。

「世界で2番目に」とは決して言わないところにも
アメリカという国の居丈高な姿が伺えて面白い。
  

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2018.12.14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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