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15時17分、パリ行き

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クリント・イーストウッド監督作品『15時17分、パリ行き』。

2015年8月21日。
アムステルダムからパリに向かう高速列車タリスの車内で
乗客に紛れ込んでいたイスラム過激派の男が、
自動小銃での無差別テロを実行する。

その時、犯人に立ち向かったのは、
ヨーロッパ旅行中のアメリカ人の若者3人組だった。

と、あらすじ的にはこれだけだ。

列車のトイレ内で準備をしてテロを実行に移したその矢先に
主人公たちに取り押さえられたので、
事件じたいは発生からほんの数分の出来事でしかない。

事件までの前後を加えても、とても1時間36分の作品にはならない。

つまり、イーストウッドが描こうとしたのは
事件のことではない。

三人の若者たちが出会った子供時代から丁寧に描いていき、
うち二人がアメリカ軍に入隊するのですが、
彼らがなぜその道を選んだのか、彼らの正義感を含めて
彼らがどこにでもいる普通の人間であることが示されていきます。

事件発生までの幼なじみ三人のヨーロッパ旅行の様子まで
事細かに紹介していくのですが、それがまるで
ただの旅番組のような風情でちょっとつまらなく感じるのですが、
もちろんラストが分かっているので、イーストウッドがこれを
どう結論に結びつける気なのか探りながら見つめました。

そしてそれらのなんてことのない日常が、
すべて運命のように散りばめられた伏線であったことが分かります。

彼らが銃器に精通していたこと。
一人が軍で柔術を体得していたこと。
銃創への対処法を心得ていたこと。
パリに行くかどうか決めかねていたこと。
たまたま寄ったバーで隣り合わせた男性に
アムステルダムに行くべきだと薦められたこと。
そうしてその日、15時17分アムステルダム発の列車に乗り込んだこと。
一旦は中頃の列車の席に着いたのだが、Wi-Fiが入る1号車に移動したことなど、
すべてが必然のようにその瞬間に繋がっていく様子が
文字通りに淡々と描かれていきます。

1517toparis2.jpg

そして、一番に驚かされるのが、
出演している主役の三人と、
最初に犯人に抵抗して後ろから首元を銃で撃たれた男性夫婦は
実際に事件に遭遇した本人たちが演じていたということ。

オーディションも済んで、すでに出演者も決定していたらしいのですが、
イーストウッドの思いつきのようなアイデアで
急遽本人に出演をオファーしたのだそうだ。

私はそうとは知らずに観ていたので、あえて素人っぽい俳優を使って
近頃多く目にするドキュメンタリータッチのリアリティを演出しているのかと
ばかり思って観ていたのですが、
途中感じた異様に淡々としていた違和感のようなものは
これが原因だったのだと後で気づいて驚かされました。

実際この賭けのような演出方法が成功したのかどうかは
英語と外国人の演技の是非の分からない私には判断できないが、
私の感じたドキュメンタリー映像のような
「エンターテインメントとしては、
 どこか物足りなさを感じる程度のリアリティ」
という点では成功していたように思う。

巨匠だからこそ成し得た、なかなか風変わりな実験のように撮られた
かなり珍しい作品でありますが、
そういった奇抜な手法も、すべては彼らの勇気と正義感を
演出感なしにまっすぐに見る者に伝えるための手段。
ぜひ彼らの純粋な気持ちをまっすぐに感じ取っていただければと思います。
(オススメ度:60)

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2018.10.12 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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