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ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品 『渦』

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私も大好きな『ブレードランナー2049』を監督した
ドゥニ・ヴィルヌーブ。
もちろんこちらでも紹介させていただいた『ボーダーライン』(2015年)
メッセージ』(2016年)もお気に入りの作品たちだ。
こうなってくると、改めて彼の初期の作品を観たくなるのは純粋なファン心理。

そこで、まずは『渦』(2000年公開)を観ることにした。

古い作品なので、
今回は遠慮なくネタバレさせていただくのでご了承いただきたい。


この作品では生鮮の魚が多くの部分でメタファーとして配置されており、
冒頭いきなり捌かれる寸前の魚がストーリーテラーとして語り始める。
かなりシュールな作品で正直私はこのテの作品が苦手だ。
開始3分で観るのを止めようかとも思ったが、
なんとか踏みとどまって続きを観ることにしたのだが、それは正解であった。

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有名女優を母に持ち、
その財産を使って自身のファッションブランドを展開するビビアン。
彼女の中絶手術から物語ははじまる。
彼女の会社は経営不振が続き、そのため投資家の兄が管理する
母の財産は差し止められ、店舗は管財人に差し押さえられてしまう。

失意を酒で忘れようとするビビアンであったが、
飲酒運転でひき逃げ事故まで起こしてしまう。

酷く酔っていたため記憶が曖昧だったのだが、
翌朝クルマに残る人身事故の痕跡を確認して、
自身のひき逃げを確信するが、
自首する勇気も、逃げる気力すら失っていた・・・

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誰もが羨む時代の先端を行く立場から
一気に奈落の底へと落ちていくビビアン。

事実を受け入れずに現実逃避を繰り返していた彼女は
ひき逃げ事故を起こしたクルマごと、海に飛び込むことを思いつく。
そして、もし生き延びることができたら、
生きることを赦されたら・・・

そうして生き延びたビビアンは、まずは殺してしまった男性の葬式に向かう。
轢かれた被害者の男性は怪我をしたまま事故現場から帰宅し、
自宅で死んでいるところを発見されており、
事故現場も特定されないため犯人は分かっていなかったのだ。

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葬式会場で離れて暮らしていた潜水夫を務める被害者の息子と出会い、
近所の知人だと偽ったビビアンは
死んだ父親の荷物の整理を手伝うことになってしまう。

翌朝にはノルウェーに帰るというひとり息子と一旦は別れるが、
思い直したように彼を追いかけ、まさに飛行機に乗り込もうとする
タイミングで「忘れ物があるの」と、彼を引き留めます。

そうしてビビアンの家で一夜を共にした二人でしたが、
男は翌朝の朝刊でまさに自身が乗ろうとしていた飛行機が
墜落事故を起こしたことを知ります。

命を救ってくれたビビアンを天使だと言う男に、
「そうではない・・・」と自身の罪を告白するビビアン。
父親をひき逃げした犯人が、自分の命を救ったことに困惑しながらも、
男はビビアンに惹かれていってしまう・・・

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そしてビビアンもまた自身の犯してきた罪と向き合うことで
荒んだ精神が再生していくという物語。

途中、ビビアンがレストランで食べたタコが硬いと文句を言うシーンがあって、
そのタコを卸していた鮮魚店の目利きがひき逃げ事故に遭った男性で、
彼がいなくなったためレストランで供された
生タコの味が落ちたことが明かされるのですが、
一連の映像によって物事は常に連鎖していることを示唆しています。

彼が車に轢かれた後も何もせずに帰宅したのも、
彼の息子がビビアンと出会うこと、あたかも
ビビアンが息子の命を救うことと繋がることを知っていたかのように
観る者に感じさせます。

そんな、かなり現実離れしたおとぎ話のような手法で、
どこにでもある自己破壊と再生を描くことで
独自のリアリティを生み出しています。

かなりクセのある作品ではありますが、
脚本のもつ奇抜さの説明を放棄せずに
きちんと向き合っているあたりが、
観る人によっては一見不可解で不愉快にも映る世界観を
現実世界に着地させることに成功している凝った作品だと思いました。
(オススメ度:60)

今作以外にもヴィルヌーブが監督した『複製された男』(2013)も観てみました。
そちらの紹介はまた次の機会に。
  

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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

2018.11.16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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オートバイと
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近ごろ波乗り。

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