『マグニフィセント・セブン』と『ガール・オン・ザ・トレイン』

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『マグニフィセント・セブン』かなりの粗挽きでした・・・

黒澤明の『七人の侍』を、西部劇にリメイクした『荒野の七人』の、
現代的解釈なのだが、日本人からすると、リメイクを追う毎に、
『七人の侍』のもつ大切な部分が、どんどん薄味になってきていて至極残念。

南北戦争後とはいえ、まだまだ差別意識の強かったこの時代に、
(タランティーノの『ジャンゴ』や『ヘイトフルエイト』のように、
 そのことを物語の伏線に使うような説明もなしに)
アフリカ系アメリカ人がリーダー格として存在することに、
少なくない違和感を憶えるが、興行収入的にもそうだし、
現在のアメリカという国の人種差別に対する繊細な対応の仕方だと思って、
そこは百歩譲ろう。

でも、そこに一度つまずいてしまうと、
あとのすべてがマジなのかコメディなのか疑わしく見えてしまう。
アフリカ系アメリカ人を重要な役として配置するのは良いと思うが、
デンゼル・ワシントンを主役に据えたのは、
そもそもの失敗のはじまりだったように思う。
(そう考えると『許されざる者』の
 モーガン・フリーマンの位置づけは巧みだった)

そんなわけで、出だしからつまずいてしまった私からすれば、
『七人の侍』の核心部にある
「多勢に無勢の、勝ち目のない戦いに、男達はなぜ挑んだのか?」
という、この物語の大切な部分まで濁らせているように感じてしまい、
どうにもまっすぐに観ることができなかった。

「自分はさておき、他人の不幸をみすみす放ってはおけない」
そのためなら命を惜しまずに悪を討つ。
それが「柔よく剛を制す」、「弱きを助け強きを挫く」の
日本人が大好きな義侠心の核心であるはずなのですが、
そのあたりの説明がかなり雑だ。というより曲解されている。

この7人は、荒くれ者ばかりの荒野で、
そこそこ上手いことやってる、イマ風に言うと「ちょい悪」で「勝ち組」だ。
それなのに、「100人相手に7人で殺し合いするよ」と誘われて、
「あいよダチ公」って感じの「軽いノリ」で、その自殺話に乗ってくる。
なぜに人助けに命をなげうつのか?の説明もないため、まったく共感できない。

唯一、リーダー格の賞金稼ぎであるサム・チザム(デンゼル・ワシントン)
にだけは、持ちかけられた、この無謀な話に乗っかる理由があるのですが、
それも義侠心にはほど遠い、ごくごく個人的な理由だったりする。

そういう命の投げだし方のほうが「クール」なのかもしれないが、
『七人の侍』のもつ、否、「侍」のもつ死生観からすると、
かなりかけ離れてしまっていて、そこがとにかく残念。
なので「黒澤明の『七人の侍』をベースにしている」とか、
インタビューで軽々しく言って欲しくはない。
と、JAPAN LOVEな私は思う。

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そんな今作で、唯一と言っていい見所は、
街を牛耳る悪党に愛する夫を目の前で殺され、
7人の流れ者達に、悪党どもの退治を依頼するエマ役のヘイリー・ベネット。
ジェニファー・ローレンスと、ケイト・ブランシェットを
足して二で割ったような魅力の持ち主だ。とてもステキです。

デンゼル・ワシントン、
クリス・プラット(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
ジュラシック・ワールド』)、
イーサン・ホーク(『ビフォア・サンライズ』『プリデスティネーション』)、
そして日本でもお馴染みのイ・ビョンホンなど、
脇を固める有名俳優陣の中にあって、男勝りでありながらも、
荒野だからこそ育まれる女性的な優しさに溢れるエマという女性を、
これしかないという強い存在感で演じておりました。


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そんなヘイリー・ベネットさんですが、同じ2016年公開の
『ガール・オン・ザ・トレイン』(日本未公開)にも、
影のある不倫妻役で出演していて、
そちらでの好演も印象深い女優さん。

ついでにそちらの話もしておくと、

自分のアルコール依存症によって、幸せな家庭を壊してしまった女性、
レイチェル(エミリー・ブラント『オール・ユー・ニード・イズ・キル
ボーダーライン』)。

毎日同じ電車で通勤しているレイチェルは、
車窓から見える一軒の家に住む、幸せそうな夫婦を眺めるのが日課になっていた。
その家は、レイチェルが離婚した元夫が、新しい妻と暮らす家のすぐ隣の家だった。
それもあって、理想的な夫婦像を、その家の夫婦に見てしまっていた。

ある日、そんな理想的だと思ってやまなかった妻が、
バルコニーで他の男性とキスしているところを車窓から目撃してしまう。
そして、その目撃のすぐあとから、その妻が失踪した事を知る。

深い失望感に包まれるレイチェルは、
妻が失踪してしまった夫に対して、自分を重ねて見てしまい、
事件にどんどん深入りしていってしまう。
しかして、アルコール依存症によって記憶が曖昧になってしまうレイチェルは、
自分が記憶のない間に、失踪した妻を殺害していたかも知れないと、
思い始める・・・・・・

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という最後に待ち受けるどんでん返しが見所になるサスペンスストーリー。
アルコール依存症という汚れ役を見事に演じて魅せた、
主役のエミリー・ブラントの演技も素晴らしかったですが、
物語のどんでん返しに繋がる重要な伏線として、
この物語の鍵となっていく情緒不安定な美しい妻、
メガン役はかなり重要な役どころ。

純粋さにも映る精神の不安定さと、
それによって放たれる誘惑的な魅力によって、
意図せずに周りの人間を翻弄してしまう微妙な役どころを
すっきりと演じきっておりました。

というわけで、
併せて観ればヘイリー・ベネットの演技の幅の広さが楽しめますが、
純粋に作品としてオススメできるのは
『ガール・オン・ザ・トレイン』の方ですかね。
『マグニフィセント・セブン』、まあまあ残念な1本です・・・
  

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2017.06.23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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