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コンビニ人間

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良い本だった。
本当に良い本だった。
こんなに良い本を、久しぶりに読んだとさえ思った。
『教団X』のあとだったから、余計にそう感じたのかな)

「本」とは何なのか?「本」に何を求めるのか?は、
それこそ千差万別、十人十色だろうから、
私のこの評価を押しつける気はサラサラないが、
ここのところ「小説のための小説」ばかりを読んでいたことを、
この『コンビニ人間』が私に気づかせてくれたことだけは、
皆さんにもお伝えしておきたい。

この本にはいわゆる題材というやつが、前提にある。

何を伝えたいのか?が前提にあると思った。

そんなのあたりまえだと思われるかもしれないが、
「小説のための小説」には、その前提を見えにくく、煙に巻くことが、
あたかも「クールだ」と言わんばかりの姿勢が、時に感じられてしまう。

真っ直ぐに見えるものは私にも見えるので、
書き手が斜に構えたり、物事をナナメに見たりすることは、
小説を生み出す上でとても重要な作業だ。

行間を想像で埋めることも読書の嗜みであることは認めるが、
そうして書き手が抽出した「伝えたいこと」は、
是非真っ直ぐに読み手に伝えて欲しい。
その上で、文体やスタイルでクールさを表現して欲しい。と、私は思う。

禅問答のような話になったが、
『コンビニ人間』の真っ直ぐさは、昨今では希有な価値があると思う。

ルールや社会の中に生きる人間として、
価値観の多様さを信じながら、自分の価値の輝きを信じながらも、
単一の価値に身を寄せざるを得ないという矛盾。

35歳の女性が、結婚もせず、定職にも就かずに
コンビニのアルバイトを続けると、様々な隣人達から、
その生活を是正するように勧告される。

確かにそれは恥ずかしいことかもしれない。
その年齢にもなれば、幼稚園児くらいの子供がいて、たとえ裕福ではなくとも、
夫と共に家族を守っていることが、“一般的" なのかもしれない。

でも本当にそうなのか?

子育てする家族にだって、女性にだって、
一般的で、単一な価値基準だけでなく、
それぞれに様々な価値や考え方があるのではないのか。

そして、なぜ人は他人にお節介をやくのか。

なぜ、わざわざその違いをあげつらって干渉してくるのか。

「あなたのため」と言いながら、
なぜその人のためにならない非難を繰り返すのか。

他人を見下すことで、安心できることでもあるのか?

稼ぎ口がコンビニのアルバイトだと、何か不都合でもあるのか。

コンビニで働くことと、大企業で働くことに、
どれだけ内容の違いがあるのか。

結婚してると偉いのか。

定職に就いていると偉いのか。

時に人は、収入の安定や、年金制度などの社会保障、
人類の繁栄、存続を理由に、カタにはまった人生を他人に対して強要してくる。

寄って暮らす社会を安定させるため、
不安定さを生む異物を排除しようと、半自動的に採ってしまう是正行動。

でも、特に趣味などなくても、食べるものに味などなくても、
それで良いと思えたら。

むしろ、コンビニで働く事が唯一の生きがいだと感じられたら。

その生き方を認めることができたら。

自分の中の、一体何が、そういった生き方を認めることを拒むのか。

私は社会のルールを破ってまで、他人の平安に揺らぎを与えてまで、
自由に生きることが正しいと言いたいわけではない。
平均的に生きることの正しさを否定する気もない。
ただ、これを読んで、
自分の寄って立つ真理に、今一度疑問を感じることができた。

お金、家族、恋愛、就職、結婚。
現代社会に生きる人間達が、あたりまえだと信じてきた “決まり事” が、
本当はどういう意味を持つのか?一体なんのための仕組みなのか?を、
365日、24時間、絶え間なく回り続けるコンビニのパーツになることが、
与えられた使命、最高の幸せだと感じる一人の女性の視線を通して
あぶり出されます。

これこそ「本」でなければ伝えられない物語だと思う。
ほんの150ページの作品なので、あっという間に読み終わってしまいますが、
そのページ数以上に考えさせられる一冊でした。

映画化される「本」が評価される時代に、
本当に読書が好きな人に贈りたい、オススメ度:100の小説です。
  

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テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

2017.06.29 | コメント(0) | トラックバック(0) |

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オートバイと
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近ごろ波乗り。

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