富士山チャレンジ【前編】

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富士山は、なんと言っても日本一の山だ。
正直、そんな山を登るなんて畏れ多いこと、考えたこともなかった。
正確に言うと「登りたい」なんて思うはずもなかった。
実際、生まれてこの方、富士山は眺めるだけで、
クルマで気軽に行けてしまう五合目にすら行ったことがない。

軽はずみに行っていい場所でないことは、すでに疑いようのない事実で、
コンビニにでも行くように、気軽に富士山に行ってしまう輩と私の間には、
標高3,700mほどの壁があることも良く解っている。

とはいえ、興味がないと言ったら嘘になる。

そもそも「日本一」とはどういう場所なのか。
ただの言葉なのか、それとも、
その後の人生に影響を与えるような、明らかに次元の変わる場所なのか。

今までもそうだったように、
何でもやってみなけりゃ、その本当のところは解らない。
(この歳になると、まあまあ正確に予想はたつが、それにしても・・・)

そしてもちろん、そのチャンスを掴むための時間が、
52歳の私にあまり多くは残されていないことも、ヒシヒシと感じている。
それは、体力以上に精神的な厳しさの方を感じている。
人は歳を重ねるごとに子供に還ると言うけれど、
叱りつけてまで引っ張り上げてくれる人間はいないのに、
決裁権を持っている「子供」ほど、挑戦に不向きであるのは間違いない。

気力、体力、天候、そして何より信頼できる仲間が揃ったら、
「もう躊躇してはいけない」と、私に残った最後の「大人」が叫んでいる。

というわけで、IK隊長が富士山に行かれるという日に
同行させてもらうことにした。
そして、先日の立山でそんな話をしていたら、
なんと、ONさんまで付き合ってくれることになった!
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私にとってIK隊長とONさんの二人は、はっきり言って、
クワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービのような存在だ。
May the Force be with you.

素直にガイドツアーに参加すべきなのだろうが、
まったく自信の持てない私の場合、
安くない金額を払って来た方々の足を引っぱる真似だけはしたくないと、
そちらの方が気になって仕方がなくなる。
そういう精神状態で登るのが、何にせよ一番良くないことは明らかだ。

そんな、自分一人では来ることさえ決められない私とは違って、
お二人ともに「はじめての富士山はひとりでフラッと来た」とか、
事もなげに言い放つ。やはりジェダイ・マスター。格が違う。
間違いなくお二人にも迷惑をかけるだろうが、
この二人なら、きっと私を新しい次元にまで押し上げてくれるだろう。

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立山では軽い高山病に悩まされたので、
今回は標高約2,000mにある須走登山口駐車場で車泊して高度順応を図る。
慣れない車泊でグッスリというわけにはいかなかったが、
途切れ途切れでも、なんとか6時間横になって、4時半に勝手に目が醒めた。
美しい朝焼け。予報通りの晴天だ。

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富士山には真北に位置する「富士吉田口(標高2,305m)」から時計回りに
「須走口(標高1,970m)」、「御殿場口(標高1,440m)」、
真南に位置する「富士宮口(標高2,380m)」まで4つの登山道がある。
ご覧のように頂上までの距離を含め、登山コースそれぞれに特徴があり、
登る人ごとに好みが別れるらしいのだが、
私には窺い知れない部分なので、ここは素直にIK隊長の指示に従って須走口。
ちなみにIK隊長が須走口を推すのは「滑り応えが一番あるから」。

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5時45分。いよいよ出発。
写真を撮ってくれたのは実はOYくん。
腰の状態が悪化してしまい、残念ながら今回は不参加。
メールで報せてくればいいのに、わざわざ登山口まで見送りに来てくれた。
私一人で二人のジェダイ・マスターの相手をするのはシンドいけど、
仕方ない、OYくん行ってくるよ・・・・・

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雪渓に取り付くまで、ひたすらに土の上を登る・・・
まだ歩き出して30分もしないうちから息は切れ、動悸は激しく、
ザックは肩に食い込み、膝も痛い。

この時点ですでに頭の中は後悔の念で一杯。
「なんでオレはこんなとこに来ちゃったんだろう・・・」。

そもそも恐る恐る来てしまっていたこともあり、
身体が苦しさを真っ直ぐに拒否しはじめると、心が折れるのも容易い。
こうなるともう、いつギブアップしようかと、それしか考えられなくなる。
ただ、こういうときが一番辛くて、これを乗り越えれば、
一気に楽になるということも頭では分かっている。

これは富士山に限ったことではなく、
どこであろうと登り始めの1時間に、最初の正念場が訪れるわけだが、
3時間のうちの最初の1時間目と、7時間のうちの最初の1時間目では、
意味合いがだいぶ違ってくる。
一体この先、何回の正念場が訪れるのだろうか・・・

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7時20分:標高2,500m
ここまで登って、やっと雪渓に辿り着く。
この頃になってやっと、息が整い、脚のダルさもとれてきた。
助かった。まずは第一関門突破だ。
途中雪渓が途切れる箇所があるので、モードチェンジも必要になるが、
ここからは基本シールで登れる。
ボードをザックから外せば、上半身が軽いのなんの。
まるで羽が生えたように軽快になる。

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毎度言うようで恐縮だが、『DEELUXE SPARK SUMMIT』は、
土の上を歩くと、その有用性がよく解るという
なかなかヒネくれたスノーボードブーツだ。
今回、また更に見直すことになった。否、惚れ直すことになった。
状況が悪化すればするほど輝きを増す、道具らしい道具だ。

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10時23分:標高2,900m
すでに出発から4時間以上が経過している。
このあたりから北風が強まりはじめ、風に煽られて歩くのが不安定になる。
この日は富士山登山でよく聞くような、
カチカチのアイスバーンなんてこともなく、とても歩きやすい雪質でしたが、
それでもこの斜度なら、よろけたらすぐに100mくらい滑落できそうだ。
ズルッと足許で崩れるザラメ雪に肝を冷やしながら進む。

登り返しを合わせて合計6時間くらい登ったことはあるが、
連続だと最長で4時間程度までしか経験がない。
ここから先は完全な未体験ゾーン。

案の定、左太ももがつりはじめた。
それまでの調子の良さから一転して、負のモードに突入。
再び「諦め」の二文字で頭が一杯になってくる。
第2の正念場。

そんな私を見かねたIK隊長は「ドーピング」と呟きながら、
電解質を補給できるタブレットを、ポケットからサッと差し出してくれた。
そして、「まだ2,500だ・・・・・あ、違った、もう3,000だ!」
とか言いながら励ましてくれる。意外に人心掌握術に長けた隊長だ。
単純な私はすっかり気がラクになってしまった。フォースのお導き。

しかして、相変わらず体内からは、
いつ爆発してもおかしくないような軋み音が聞こえている。
まだあと標高差800m以上もあり、そして、
ここから斜度が増して、空気もさらに薄くなってくる。
果たして、私の体力と気力は、あとどれくらいもつのだろうか・・・・
すでに登頂への期待感は消え失せ、
私の中には不安感しか残っていない・・・

(後編につづく)
  

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2017.05.29 | コメント(0) | トラックバック(0) | スプリット・ボード

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