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村上春樹【騎士団長殺し】第1部、第2部。

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やはり、発売と同時に買ってしまった。
第1部、第2部、各定価¥1,800(税別)は安くないし、
何より単行本は持ち運ぶには重い。
なので、文庫化を待つのが得策なのだが、
村上春樹の新作だというだけで読まずにいられなくなってしまった。
お恥ずかしい限りだが、要は話題作に弱いミーハーな理由でしかない。

なので、読み終わったあとで、
「理由はさておき、良い本を読んだ」と思えることを期待して、
そして、村上春樹ならば、そうなる確率が高いことを皮算用したわけなのですが、
結論から申し上げて、残念ながら心から「おもしろかた」と
言える作品ではありませんでした。

私は、TVドラマでも、映画でも、物語に結論が欲しい人間だ。
小説なら尚更に。
示唆した物事に、それなりの論理的な解答で結んで欲しいと思う。
その解答が、ぴったりエンディングに結実されれば言うことナシだ。

どうやら、村上春樹という作家は、そもそもそういったことに
頓着しない(ことの多い)人のようだ。

科学的な理屈ではなくても、なんとか納得することのできる、
ギリギリ解答らしきものを受け取れることが、『1Q84』をはじめ、
ここ数作では実際にあったので、今回もそれに期待したわけだが、
今作に関しては、かなりの肩透かしを喰った。

幼くして亡くした大切な妹。
突然、理由もなく別れを告げてきた妻。
謎の多い金持ちから依頼される高額報酬の仕事。
世界的に有名な日本画家のアトリエに隠されていた大作。
アトリエの裏に見つかった古い祠と、井戸のような「穴」。
夜な夜な決まった時間にそこから微かに聞こえてくる鈴の音・・・

オカルトチックで不気味な出来事と、策謀と罠の匂い、
そこから逃れられない人間の弱さと過ち・・・
あまりに突然に、あまりに理不尽に妻に捨てられた男は、自分を見失いながら、
得体の知れない暗闇に引きずり込まれていってしまうのか・・・・・

・・・・・と思いきや、突如目の前に現れたのは、身長60cmほどの、
おかしな言葉遣いをする「イデア」を自称する奇妙な存在。
謎めいていた登場人物達には、実はそれぞれにとても分かりやすい重荷を、
その両肩に抱えている市井の人々だった。

ナチス以前のヨーロッパに、深い絵画への理解、
芸術家の思考論理への理解、シルバーのジャガー、プジョー205など、
読み手の創造力を喚起する情報の配置の仕方。
そのセンスと、ナンセンスの組合わせ方、それを使った気の惹き方など、
振り撒かれた謎たちが、答に向かって一気呵成に収束していくように設計された
物語の運び方や、文捌きは、さすが村上春樹と言わざるを得ないものでした。

そもそも、この題名は、本作を意味づける重要なキーワードではない。と、思う。
すでにそこからして「解答」を避ける、良い意味で読み手の期待を裏切るための
ギミックが進行していたようにも感じる。

「井戸のような穴の真実」、
「イデアとは如何なる存在なのか?」はもちろんのこと、
「森の中にあるという秘密の抜け道」、
「幼い妹の死との関係」、
「別れた妻の妊娠」、
「東北を巡った傷心旅行中に出会ったスバルフォレスターの男」、
「宗教団体に資産を吸い上げられている資産家の父親」、など、
そのギミックとおぼしき伏線は、結局「閉じない環」とでも言いたげに、
もしくは意味ありげに、謎は謎としてそこに放置されたまま終演を迎えてしまった。

上下巻ではないことを考えると、ひょっとしてこれは、
第3部以降が存在する、計画的な悪戯なのかもしれないが、
そういう主観による補完も含め、今はただただ、
ザワザワとさせられた気持ちもそのまま放置されてしまっている。

そんな、本にザワザワを期待するムキには堪らない作品でありましょうが、
お子ちゃまの私には到底無理だ・・・

ひょっとすると、スタジオジブリが今作をアニメ化したら、
(トトロが何者なのか?論理的に知りたいと思う人はいないだろう)
なんとなく納得してしまいそうな、そういう種類の物語でありました。
  

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テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

2017.04.21 | コメント(0) | トラックバック(0) |

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