マチネの終わりに

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本を読むのは好きだけど、
読みたい本が見つからないという人は多いのではなかろうか?

それを理由に本屋を徘徊するのは嫌いではないが、
そんな状態で読みたい本に出会えるはずもない。
かといって書評に目を通すほど好き者ではないし、
「一番売れてます」みたいな本に手を出すようなお人好しでもない。

そんなヒネクレ者に『アメトーーク 読書芸人』と言う番組は、
ことのほか役に立つ。

この『マチネの終わりに』も、番組中で紹介されていた本だ。

番組中、様々に紹介されていた本の中から、これを選んだのはもちろん、
最近すっかり恋愛方面にご無沙汰になっている私の諸事情のせいだが、
音楽でも文学でも、そういう心の空洞に、自虐的に当て込むのが、
芸術のもつ効果効能が、一番高く顕れることもまた確かなので、
この際、臆面もなく傷口に塩を擦り込むことにする。

そんなわけで、こちらは恋愛小説だ。

恋愛に限らず、人間関係の困ったところは、
これだけコミュニケーションツールが発達した現代に於いても尚、
相手の本心が読み切れないという所にある。
だから、ちょっとした誤解やボタンの掛け違いで、
いとも簡単に、人と人とはすれ違って行ってしまう。

本当の意味で文学が取り扱う恋愛とは、犬も食わないような色恋話ではなく、
すれ違いを含めた、恋愛だからこそ巻き起こる、
様々な人間の苦悩や葛藤、そのものなわけだ。

誤解という行為はまた、当該人物の知能指数が高ければ、
情報不足かも、認識不足かも、なんていう不確実な可能性に頼らなくなるので、
そもそも「勘違い」とかいう、ミスがなくなる。
そして、「勘ぐり」や「決めつけ」なんていう低レベルな人間のすることは、
誇りに賭けて絶対に避ける傾向も顕著だ。

そんな知能指数の高い人間が、もし何かの要因によってすれ違うような
ことがあれば、そのすれ違い方は、凡人の勘違い以上に悲惨な結果となり、
その傷の有り様は、より文学向きな題材となるわけだ。

なので、若くして名声を手にした天才ギタリストと、
世界的に活躍する外国人映画監督を父に持つ、
紛争地域を取材する女性ジャーナリスト、という男女の物語は、
私のような凡人には、これ以上ないくらいに嫌みな物語でもあるのだが、
だからこそ描ける人間の悲哀と愚かさというものもある。

「これまでたった三度しか会ったことがなく、
 しかも、人生で最も深く愛した人。」

あなたはそんな人に出会ったことがあるだろうか???
私にはない。と思う。(ひょっとしたらいたのかも?
でも、気づけていない時点で出会ってないのと同じか)

そんな知識と教養に富んだ二人だからこそ、出会った瞬間から直感的に、
相手を自身にとって最愛の相手だと理解し、運命の相手だと認めることができたし、
相手に対する尊敬も、強い思いや確信もあったからこそ、
相手の「心変わり」にもすぐさま対応できてしまったわけだ。

しかして、それが悲惨だと言ったように、
相手の心変わりだと察したことが実は、
頭の回転が速すぎるが故の「早合点」であることに、考えが至らないのは、
まさに英知を授かった人間に与えられた「罰」のようなものだ。

しかもそれが、そんな二人の才能に嫉妬する、知能指数の低い、
自己中心的な凡人の横恋慕から発生した、
人為的な事故であるという部分がこの物語のミソだ。

人が人の運命を左右するようなことを、
悪意を持って行うなんてことが、「紛争地域以外で起こるはずがない」という、
知能指数の高さ故のミスジャッジを誘発し、
想像だにできないような、心を打つ残酷性を、そこに発生させている。

そんなわけで、才能や知識に富んだ人間たちが、相手を思いやりすぎる割に、
簡単に自分を卑下して考えてしまうその特性故に、
結果、運命の相手と、完全にすれ違ってしまうという残酷性は、
とても文学的な試みであるわけだ。

ラストシーンまで一気に読み切ってしまいたくなるような、
素晴らしいラブ・ストーリーであり、人間の無知と英知がせめぎ合って導き出す、
矛盾した解答のもつ儚さや、惨さを描いた文学性の高い一冊だと思います。

さておき、来週はバレンタインデーですね〜〜〜
私には何の関係もございませんが、チョコレートと一緒に、
こんなほろ苦い一冊をプレゼントしてみるのはいかがでしょう?
諸般の事情で心の澄んでいない方、澄んだ恋愛にご無沙汰の方に、是非。
  

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2017.02.10 | コメント(0) | トラックバック(0) |

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