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村上海賊の娘

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時は天正四年(1576年)、織田信長と大坂(大阪)本願寺の戦いは七年目を迎えていた。
大阪本願寺より援軍を要請されていた毛利家は、
陸路での兵糧入れを諦め、海路からの兵糧入れを考えていた。
それに際して白羽の矢が立ったのが、瀬戸内を本拠とする海賊「村上海軍」であった。

しかして、毛利に忠義はあっても、大坂本願寺を助ける理由などない村上家は、
その申し出をにべもなく断るが、なんと村上水軍の当主、村上武吉は、
長女の景(きょう)を毛利家直属の警固衆(水軍)の長、児玉就英への
輿入れと引き替えに、大坂本願寺への水路での兵糧入れを引き受けると打診する。

しかして、その景は、女だてらに海賊仕事に明け暮れる
剛剣を振るう女剣士で、輿入れ先などあろうはずもない醜女であった。

そんな父親の申し入れなど聞く耳を持たない景は、
話半分で城を飛び出し、またも海賊仕事に出かけてしまうが、
その仕事先が、大坂本願寺へ助太刀に向かうという一向宗の門徒である、
安芸高崎の百姓衆を運ぶことであった。

最初は百姓どもを大坂本願寺に届けることに難色を示す景だったが、
「泉州の海賊たちは景のような女性、バテレンのごとき外見の女性に目がない」
という門徒の中にいた長老の源爺の嘘話を真に受けてしまい、
男漁りのためその仕事を引き受けてしまう。

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そうして辿り着いた大阪で、織田信長寄りである、泉州の水軍『眞鍋家』当主、
眞鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)と運命の出会いを果たすこととなる。
この七五三兵衛という男がまた怪物と畏れられる剛強無双の巨漢であった。
すると、あろうことか、源爺の嘘が真になってしまい、驚いたことに
七五三兵衛をはじめ、泉州の男どもに寄ってたかって景は好かれてしまう。

しかして、男どもに代わる代わるに惚れられてしまう幸せな時間は長くは続かず、
そのあとついに織田方と本願寺との戦が勃発してしまう。
それまでは遊び半分の海賊仕事でも、自分に敵う相手などいなかった景であったが、
相手が老人であろうと何であろうと、完膚なきまでに叩き潰す戦の真実を
目の当たりにして、まだ敵方にまで情を寄せてしまう自分の覚悟のなさを
心底思い知ってしまう。

そんな意気地のない人間を「面しゃーない奴」と呼んで軽蔑する
七五三兵衛にまで蔑まれてしまい、まさに井の中の蛙であった景は、
ほとほと自分の小ささを知って意気消沈し、瀬戸内へと引き返してしまう。

輿入れの話が片方で進んでいながら、
何も言わずに景を大阪への海賊仕事に送り出した父、村上武吉は、
景が本当の戦を目の当たりにすれば、海賊仕事を諦め、
輿入れの話にも素直に応じるであろうことを予想していたのであった。

しかして、
「無駄死にと分かっていても、敵に立ち向かって死ななければ極楽浄土には行けぬ」
という、理不尽極まりない戦を強いられている、自身が送り届けた
一向宗門徒たちの思いを知るに、一度は折れかけた心を奮い立たせ、
真の剣士として、村上海賊の娘として、景は、怪物、眞鍋七五三兵衛率いる
泉州の海賊との海戦の先陣を切っていく。
そして、そんな無謀とも思える景の行動は、
すでに禁じ手とされるほど、伝説となり畏れられた、最強にして最後の海賊戦法、
『鬼手』を発動させることになる・・・・・



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北海道ツーリングの往復の船上と、
3泊したテントの中で2巻までを読み終え、
つづく3〜4巻も一週間とかからずに読み終えてしまった。

私はこのテの歴史小説の類を読んだことがなかったので、
本当の偶然でしかないのであるが、
旅の友、中でも船旅の友に、この本はもってこいでありました。

それは、ほとんど仕事のあとの自宅でテレビを観るような、
肩の力が抜けたところにスス〜っと入り込んで来る、
気軽で軽妙な映像作品のような、おとぎ話でありました。

最初はこの恥ずかしげもない演出過多の出来過ぎた展開に、
ちょっとした胃もたれを感じましたが、そういうものだと分かってからは、
逆にその分かりやすい、やり過ぎな感じにすっかり病みつきになってしまい、
ツーリング中を含め「すぐに続きが読みたい」と思わされるほど、
スピード感もテンポも良く、まさに物語の中に引きずり込まれてしまった。

きっとこれを読む誰しもが、「映画化するなら」と、登場人物たちを、
自分の好きな俳優で配役しようとしていまうだろう。
それほどに劇中の画が頭に浮かぶようなとても分かりやすいお話でありました。
聞けば、和田 竜という作家は、元々テレビ関係の方だったようで、
こういったイメージしやすい文体も、それもあってのことなのだろう。

そんなことを書くと、小説のための物語でしかないように
思えてしまうかもしれないが、そんな娯楽的要素とは裏腹に、
史実との整合性にとても気を配られているようで、
実在の登場人物たちだからこその、生き活きとした躍動感が描写されている。
そういったこともあり、日本史にはとんと疎い私でも、
気軽に「歴史冒険活劇」を旅することができたのだと思います。
  

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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

2016.11.10 | コメント(0) | トラックバック(0) |

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