STEVE JOBS

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『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督、
『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキン脚本、
マイケル・ファスベンダー主演の『STEVE JOBS』を観ました。

すでに2013年に『JOBS』という題名で、
スティーブ・ジョブズの回顧録を元にして、
その半生を描いた映画(残念ながら駄作)がありましたが、
それから3年という時間だけを開けた2016年に、
再びこの男にスポットを当てた映画を撮るとはかなりの勇気だ。

ということは、まだまだスティーブ・ジョブズという男の魅力を
描き切れていないということなのだろうし、実際私もそう思う。
あの映画のデキでは尚のことだ。

織田信長や、豊臣秀吉あたりの、贔屓にしている武将の物語にしても、
諸説モロモロあるわけなので、歴史解釈や、その人物像に違和感を憶える
小説や映画に出くわすこともあるだろう。

2013年の『JOBS』の話は置いておいても、
この『STEVE JOBS』にしても、アップル信者の私の目には偏って見え、
彼の成し得た偉業に疑いをかける、かなり禍々しいものとして見えました。

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でも、
スティーブ・ジョブズという人間は、
斬新で、奇抜で、破天荒で、死ぬほど正直なキチガイだったわけで、
その狂気によって、真のイノベーションが達成されたことを片方に置いて、
改めてこの人間を捉えると、これほど興味深い人格を持った人間もいない。

だから、ジョブズやAppleや、Macに対して先入観の無い方が観たら、
この映画はかなり面白いと言えるだろう。

スティーブ・ジョブズを評するときに、良く語られる「現実歪曲フィールド」
というものがある。

有名なところでは、とにかくiPodを小さくしたかったジョブズは、
「これ以上小さくするのは不可能だ」と言って引かない技術者を前に、
iPodの試作品を、水の入ったコップに投げ込み、筐体からポコポコと
泡が出るのを指して「空気があるということはまだ小さくできるということだ」と
言い放ったという逸話がある。

そして実際に iPodはあの大きさにまでなったというわけだ。

今作でも1984年のMacintoshの発表会で「Macに「Hello」と言わせろ!」と、
開始40分前に言い放つ、実際にあった有名なシーンがあるのだが、
とにかく、それが一体どれだけ大切なことなのか、
常人にはまったく窺い知ることができない。

そもそも、プログラムのひとつも書けない、技術者でもないジョブズは、
そうやって多くの人たちを傷つけながらも、彼にしか見えない未来を描き、
そしてそのほとんどを現実社会に与えてきた、天才的なビジョナリーだ。

そこには彼にしか理解できない崇高な価値基準があって、
それを如何なる方法をもってしても、多少他人が心に傷を負おうとも、
構わず達成させようとする。

回りの人間たちはそんなジョブズの態度を指して
「現実歪曲フィールド」と呼んでいたのだそうだ。

もうひとつのシーンでは、
ジョブズの家のガレージ(本作では実際のジョブズの実家が
使われています)で、ジョブズと一緒にアップルを立ち上げた
言わば盟友であるはずのスティーブ・ウォズニアックをして、
あまりに理不尽なジョブズの態度に、
二進法(バイナリ)とは違う。
 才能と人格は共存できるはずだ!」

言い放つシーンがありますが、
それは観る者をも、とても切ない気分にさせます。

たとえ古くからの盟友の頼みであっても、断じてそれをするわけにはいかない、
ジョブズなりの信念と、それをすることによって曲がってしまう、
彼にしか見えない未来がある。

そして、数年後にはほぼすべての人が、それなくして暮らしていけない、
スマートフォンというデバイスを手にするようになり、
彼の描いた未来は本当に到来してしまう。

それに加え、実の娘を長い間認知しなかったという逸話も残っていて、
しかも、あれだけの億万長者でありながら、養育費を含めて、
支払いを固辞していたという信じられない話まである。

この娘のリサに対してして行っていた行為に関しては、
信者である私であってももちろん理解不能だ。

そんな、天才的なクリエイターであり、経営者である一面と、
実の親に捨てられた過去を持つ、ねじ曲がった家族感をもつ一面とが、
完全に混在してしまっていて、見方によってはただの人格破綻者でしかない。

そんな素晴らしくも、心の歪んだ魅力的な人物像を、
映画という箱の中で顕在化しようと試みたのが、
この『STEVE JOBS』だと思う。

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そんな狂人を、マイケル・ファスベンダーは
渾身の演技でもって、ジョブズ死後の現代に、
その禍々しい姿を蘇らせています。

ちなみに、今作は iTunesストアでは扱われておりません・・・
  

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2016.07.08 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

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