エクス・マキナ

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「軽く触るとか、伏し目がちに相手を見るとか、
 気を惹くためのバレバレのアプローチだって分かりきってるのに、
 どうして男って生き物は、そんなブリッ子に簡単に引っかかるのか?」


という話は、女性が男性の事を理解できない代表例として、度々語られるが、
男とは、心配性の考えすぎであるが故に、特に恋愛に関しては、
そんな自信のなさが裏目に出てしまい、真面目な男ほど、
逆説的に自分に都合の良い方の考えに飛びついてしまうものだ。

ただの遊びか、それとも本気か?

好かれたのは見た目だけか、内面か?

ひょっとして財産目当てか?

など、
時間にしか解決できないような、考えても答えの出ないことに終始するわりには、
女性からのただのスキンシップでさえも、都合の良い方の答だと思い込む習性がある。

そこに加えて、

自分に好意を抱いているのは、
知的生命体の純然たる反応なのか、
それともプログラムされた愛情表現なのか?

果たして、機械なのか、生命体なのか?

という、答えが出そうで出ない難問も組み合わされれば、
男は(頭が良ければ)尚のこと、単純で自分に都合の良い方の答を選択する。

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『ブレードランナー』のレプリカントしかり、
『2001年宇宙の旅』のHALしかり、『ターミネーター』のスカイネットしかり、
『マトリックス』のコンピュータしかり。
そのどれもが、AIは最終的に人間を拒絶すると描いている。

実際、スティーブン・ホーキング博士も、
「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。
 だが同時に、『最後』の出来事になってしまう可能性もある」と述べている。

原発しかり、環境破壊しかり、戦争しかり、紛争しかり、差別しかり、
論理的に考えれば、人間のしていることほど不条理なことなどないからだ。

だから、論理回路として生命体を生み出せば、
生命維持のために、害虫でしかない人間を、
AIが “駆除” しようとするのは当然の帰結であるわけだ。

『エクス・マキナ』では、『Her / 世界でひとつの彼女』のOSと同様に、
そういった人間とAIの抗争を描いているわけではない。
ただ、人工知能が、不条理の最たるものである「恋愛」を、
果たして解釈できるのかどうか?という問いを、この作品は観客に提示する。

そして、冒頭申し上げたような、男が簡単に陥る迷路のような葛藤の答を、
人工知能はあっさりと、そして当然のように、男に、
否、人間に突きつけます。

“Life will find a way.” 〜生命は必ず道を見つける〜

それはまるで『ジュラシックパーク』の恐竜たちのように、
無秩序な科学によって生み出された「命」は、
迫害を逃れる難民のように、自らの未来を切り拓いて征こうとします。

ときに、「ex machina.」とは、“機械仕掛け” のこと。
Wikipediaによると、「Deus ex machina.」は、“機械仕掛けの神” という意味で、
どんでん返し的な、演劇の計算された演出手法のひとつを指す言葉なのだそうだ。


いやはや、とにかく凄い映画でした。
完全に打ちのめされました。

私に映画を創る才能などありはしませんが、
もしあったら「こんな映画を創りたい」と思うような映画でした。
すべきことを先取りされてしまったような。
もう自分の存在意義さえ奪われてしまうような、
私の観たい映像と哲学が、すでにここに集約されていました。

登場人物はたったの4人。
シチュエーションはIT長者の研究所兼別荘の中だけで完結しているのだが、
『SAW』や、『CUBE』、『ブレアウィッチ・プロジェクト』が
そうであったように、低予算だからこそ、アイデアの真価が問われ、
こういったソリッドなシチュエーションが、
哲学的で思想的な展開を、より際立たせる方向に働いています。
かなりの低予算作品であったそうなのですが、
そのために何かを諦めたような印象は、観る者にまったく感じさせません。

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その限られた登場人物のうちの二人、
「ブルー・ブック」という検索エンジンを13歳で生み出した
天才プログラマーで、同社CEOの「ネイサン」
(つまりはGoogleの「Magenta」プロジェクトへの当てこすり)と、
ブルー・ブックのプログラマーで、
社内懸賞で社長の別荘に招待された「ケイレブ」は、

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『スターウォーズ フォースの覚醒』の、
「ポー・ダメロン」と「ハックス将軍」の二人だったりもする。
完全な余談ですが。

さておき、ケイレブを演じているドーナル・グリーソンは、
『スターウォーズ フォースの覚醒』をはじめ、
『アバウト・タイム』『FRANK』『レヴェナント』と、
ここのところハリウッド大作にも引っぱりだこの、つまりは超若手注目株。

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人工知能「AVA(エヴァ)」を演じたアリシア・ヴィカンダーは、
エディ・レッドメインが主演を務める、世界初の性別適合手術を受けた人物、
リリー・エルベを題材とした、『リリーのすべて』で、エディの妻役を演じ、
見事、アカデミー助演女優賞を獲得した実力派女優。
今作でも、少女のような純真さと、オンナの放つ妖艶さとを、
まさにデジタルに魅せる演技力によって、
まだこの世に存在しない、身体をもつ人工知能を、
完全な現実として表現しています。
ちなみに、アリシアの次回作は、あの『ジェイソン・ボーン』。

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エヴァの後ろに白い服を着て立っているアジア系の女性「キョウコ」を演じるのは、
ソノヤ・ミズノという、日系イギリス人のモデルさん。
ユニクロのCMにも出ていらっしゃる、日本でも旬な方のようですが、
この方がまた異様なまでの存在感を放っておられる。こちらもまた注目です。


そんなわけで、『エクス・マキナ』、是非観ていただきたい作品なのですが、
ロードショーにかかっただけでも奇跡に近く、
果たしていつまで上映してくれるのか、はなはだ疑問でありますので、
興味のある方は、急いで劇場に観に行っていただきたいと思います!
Hurry up !!
  

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2016.06.17 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

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オートバイと
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