白鯨との戦い

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今回はある意味夏っぽい作品をご紹介いたしましょう。

例によって日本での公開時の宣伝方法によって、
内容の印象がまったく違って見えてしまう、代表のような映画でありました。
原題はご覧のように『In the Heart of the Sea』。

『母なる海に抱かれて』的なこの題名よりも、
ジョーズ的な海洋アクションに見えた方が客足は見込めるのかもしれませんが、
それにしても・・・とは思う。
「じゃあ何か代案を出してみろ」と言われても難しいんですけど、
口コミが重視される昨今のマーケティング手法の視点で考えると、
観終わったあとに「話が違う」みたいなことになってしまう方が、
誰かにも薦めたりしなくなるので、問題が大きいように思う。

というように、ジョーズ的なパニックものではなく、
実はとても重みのあるお話。

翻って反捕鯨の匂いがぷんぷんに匂ってしまうところに
胡散臭さを感じずにはいられないが、
人間社会がいかに自分勝手な論理で自然資源を浪費し続けているかという
現代社会にも通ずる大きな問題点を、シンプルに見せているという点では
素晴らしい脚本だと思った。

日本人は主に食べるために捕鯨をしているが、石油が見つかる以前の
19世紀のアメリカでは、鯨の身体の脂を燃料として利用していて
今作の中では主にその油が夜の街灯に使われていることを描き、
「灯り」という人間のエゴの究極の出発点に、
無数の海洋生物の命が燃やされていたことを観る者の心に刻み込んでくる。

ただし、環境問題という重いテーマに加えて、
広大な海の上での絶体絶命のサバイバルな状況を通して、
人間の生への執着心を描いていたり、
もちろん最新のVFX技術によって描かれる壮大な捕鯨のシーンや
人間の無力さの象徴のような圧倒的に巨大な白鯨との死闘など、
アクション要素もそこに加わるテンコ盛りで、そんな重要な社会的テーマも
観終わる頃にはだいぶ薄れてしまっているのは残念でありました・・・

それこそ、白鯨との戦いだけに焦点を絞った、
いっそB級の海洋アドベンチャーにしてしまっても良かっただろうし、
『レヴェナント』のように、人間の生きる力に焦点を当てて
描き切ってみるのも良かっただろう。
有名監督による娯楽大作というカタにはめるために、
贅沢に詰め込みすぎでフォーカスポイントがぼやけてしまっておりました。

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監督は『ラッシュ』のロン・ハワード。
主役も同じくラッシュでジェームス・ハントを演じたクリス・ヘムズワース。
ていうか『マイティー・ソー』の人って言った方がいいか。

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そして、白鯨との死闘によって船を失い、
数十日間に及んだ海の上でのサバイバルの一部始終を、新進気鋭の小説家
ハーマン・メルヴィル(その後『Moby-Dick(白鯨)』を書き上げる)に
語ることになる重要な役どころを『シヴィル・ウォー』から登場した
新しいスパイダーマンに抜擢されたトム・ホランドが演じている。

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それ以外にも多くの注目俳優が名を連ねるが、
中でもメルヴィルを演じたベン・ウィショーは、
私の大好きな『クラウド・アトラス』に、
それまでは老紳士が起用され続けてきた「M」という役どころに、
ITオタクの若者を配置するという、まさに新しい『007』の象徴となったことでも
注目を集めることとなった俳優さんだ。

といったように、とても豪華な制作陣なので、
貴重な休日のヒトトキをこの作品に割いてもハズすことはないとは思うが、
娯楽作品の皮を被った少々重い作品でありますので、
若干の注意が必要だということはお伝えしておきましょう。
  

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2016.08.05 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

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