巡り逢わせのお弁当

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インド映画といえば、つい歌に踊りが満載の喜劇や大活劇を想像してしまうが、
そんなふうに思って食わず嫌いをすると、絶対に損をする映画です。

特に今回主演のイルファーン・カーンは、インドの方ではありますが、
最新作『ジュラシック・ワールド』をはじめ、『ライフ・オブ・パイ』
『アメイジング・スパイダーマン』など、ハリウッド映画の中でも
多くのメジャー作品に出演するほどの俳優さんなので、
尚のことそんな食わず嫌いな私にとっては手を出しやいインド映画でありました。

まず最初に面食らうのは、
インドのムンバイには、お弁当を運ぶだけの運び屋さんがいること。
しかもそれは、お弁当屋さんのデリバリーだけではなく、
なんとご家庭の奥さまお手製のお弁当を、自転車を漕いで何軒も回って受け取り、
遠路はるばる電車に乗ってオフィスまで届けてくれるのだ。

日本のように旦那さんが家を出るときに持って行けばいいだけの話なのだが、
わざわざあとから別の人間がデリバリーしているわけだ。

劇中登場するインドのお弁当箱は、かなり大きなものだし、
通勤ラッシュ時とても混雑する電車内では大きなお弁当箱が邪魔になってしまうため
旦那さんの持ち運ぶ手間を省くことが、ハタ目には奇っ怪なものに映る
このお弁当デリバリーサービスが発達した理由だと思われる。
あとはお子さんの送り出しなど、朝の家事に忙しい奥さまが、
少しでもゆっくりお弁当の支度ができるといったメリットも推察されるが、
それにしても、何ともユニークなサービスだ。

詳細なシステムに関しては良く解らないのだが、
最終的には人が運ぶものなので、もちろん間違いはある。

その600万分の1の可能性しかない間違いによって、
お弁当がある意味 “届くべき人の元へ届く" というお話です。

相手のことをどれだけ思っても、相手の目を見てきちんと話しても、
その思いがきちんと届く可能性って、かなり低いものです。
少なくとも私の場合はかなり低い(当社比)。

でも、手紙のほんの数行でその思いのほとんどが伝わってしまったり、
顔を見たこともない相手のすべてを受け入れられたりする。
そんなおとぎ話のようで、何処にでもありそうなお話。

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妻に先立たれ、以来心を閉ざしてきた男が、
また人を思うようになることで、周りに対して
徐々に気遣いができるようになっていく。

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献身的に夫の介護を続ける叔母や、
寝たきりだった父親の死、それによって心を喪失してしまう母を見ながら、
自分の夫への思いの軽さに少なくない疑問を抱いていく女。

そんな大人の男女のそれぞれのプラスとマイナスが、
組み合わさっていく過程を、時にゆっくりと、かといってユル過ぎないペースで、
主人公たちから半歩離れたカメラのフレーミングで追っていきます。

相手を見てみたい、会って話がしたいとお互いに思っても、
それぞれの事情がそれを許さなかったり、いざという時に尻込みしたり。

1993年のトム・ハンクス、メグ・ライアン共演の
『めぐり逢えたら』(原題:Sleepless in Seattle)を思い出させる
恋愛映画のすでにお約束とも言える “すれ違い" が
ここでも繰り返し描かれます。

でも、そんなハリウッド作品とは違い、
全編通してムンバイの街並みや生活などの背景を大切にした、
比較的被写界深度の浅い画角の切り取り方が秀逸で、
ハッピーでストレートな恋愛映画とは違い、
恋愛がその人の抱える人生の一部として描かれるカメラワークでありました。
これには私のインド映画に対する偏見を完全に払拭されました。

大人の男女の思慮深さや、相手を深く思う気持ちを、
観る者に痛いほどに伝えながら、ちょっとした幸運も二人に手を貸すような、
恋愛のもつ魔法のような甘い部分もきちんと描かれていて、
埃っぽくて、忙しない、人間味溢れる街の片隅で起こる
小さな奇跡を観ることができます。

そうして訪れるラストシーンは、これまたなんとも言えない大人っぽさ。
いまだ子供入ってる私には、この終わり方はかなり歯痒くて、
それこそ超のつくハッピーエンドな『めぐり逢えたら』を
すぐに観返したくなってしまいましたが、そんな寸止め感もまた
ハリウッド作品とは違って、とてもアダルトな一作でございます。

今どき珍しい、40歳以上のあなたにお薦めの恋愛映画です。
  

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2015.10.02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

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