BMW R1200GS 10周年 (後編)

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BMWに乗るようになってからというもの、
それまでは行っても箱根あたりまででお腹いっぱいだった私が、
東北程度はいつものコースとなり、北陸や関西に北海道、四国など、
多くの長距離ツーリングに出かけるようになってしまった。しかも、
それまでの弾丸ショートツーリングとは違う、安全運転のロングツーリングだ。

それはつまり、純粋にオートバイを操るという楽しさに加えて、
それをいかに長い時間、長い距離で享受できるか。
それが、オートバイに求める本質であると気づけたということだ。

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そして、GSに乗り始めてからはそこにオフロードツーリングが加わって、
ロングツーリングの合間に近所の林道にも頻繁に通うようになり、
さらに行動範囲という名の可能性は一気に拡がったわけだ。

そういった
「この地球上に存在する場所の、ほとんどすべてを網羅できるようにする」
という願望こそが、四大大陸をフィールドとするBMWの純然たる目標であり、
存在理由だと私は思う。

では、その目標を達成するために、
オートバイに求められる一番大切なこととは何か?

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それは「安全」であると、
BMWは静かに主張している。


そのために磨き上げられたアーキテクチュアに加えて、
ABSブレーキなどのデバイスによって安全性が確保されているのは、
もはやBMWにとっては当然といっていい部分だ。
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中でも、そんなBMWの哲学が色濃く顕れているのは、
フロントサスペンションに採用されたテレレバーサスペンションだ。
原理と構造の説明は長くなるのでここでは省くが、
要は一般的なテレスコピックサスペンションを、
メインフレームから伸びたスイングアームに連結することで、
ステアリング周りの衝撃吸収と操舵の役割を分離することが可能になっている。

ある雨の日、ドライな路面なら80km/hくらいまでラクに許容できるコーナーに
うっかり70km/h程度で入ってしまったことがある。しかも、運の悪いことに、
ブラインドコーナーの走行ラインのど真ん中にマンホールが居座っていた。
すでにブレーキングも、バンク角を増してのライン変更も間に合わず、
私はアクセルを戻してただ祈るようにやり過ごすしかできることがない状況に
陥ってしまった。

運良くフロントタイヤはマンホールをイン側に避けていったのだが、
次の瞬間、後輪は60cmほどのマンホールの端から端まで滑走したあと、
舗装に戻ったその刹那にグリップを取り戻し、激しく車体を左右に揺らし始めた。
ハイサイドからのヨーイングという状況だ。

普通のテレスコピックであれば、暴れるハンドルは操舵が一切効かずに
そのまま外側のガードレールに直行になるのがオチだが、
なんと、私のGSはその最中もハンドル操作が可能だった。しかも、
ひと度ヨーイングに入れば、ステアリング・ダンパーがあろうがなかろうが、
ハンドルは握っていられないほど暴れ出すはずが、
その応力はハンドルや前輪ではなくハンドルピボットを中心に
車体側が後輪を左右に振り回していて、
ハンドルから手・腕に伝わる振動やキックバックはまったく発生しなかった。

そうしてコーナーの出口で車体が直立する頃には自然に納まってしまい
その間の出来事がスローモーションのように感じたことを憶えている。

期せずして衝撃吸収と操舵が完全に分離していることを体感できたわけだ。

こういった、重量は嵩むし、フリクションロスだって増えるような複雑な機構を
安全確保のために通常のカタログモデルに盛り込むメーカーなど他にない。
そのために執るべき手段は残さず採用するという執念のような徹底した部分には
本当に感服させられる。

そして、長距離を移動するために、
オートバイに求められる2番目に大切なこと。

それは「快適性」である。
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国産の並列4気筒エンジンのシャープでいて力強い吹け上がりも大好きだが、
空冷ボクサーエンジンの適度なパルス感を伴った
トルクフルなレスポンスも病みつきになる。

そして、そのパルス感は、まるでタイヤノイズや車体の発するバイブレーションに、
ハーシュネスまでをも打ち消すような効果があって、
特に高速道路でをパーシャル開度で一定走行しているときの
疲れなさ加減は特筆するものがある。

そのエンジンと協調するように設計されているフレームをはじめとした車体周りに
身体に当たる走行風を適度に遮断するエアロダイナミクスや、
先ほど述べた安全性能が、運転中の精神状態を常に安定させるように機能する。

晴れの日はもちろん、気の置けない雨の中であっても達成される
そういった淀みのない安定した精神状態は、
集中力を高めて操作ミスを軽減し、そして何より乗り手を精神的に疲れさせない。

事実、私はBMWで事故を起こしたことがない。
(同時期に所有していたT-MAXでは何回かやらかしている・・・)

ただ、ここで声を大にして申し上げておきたいのは、
そういったパッシブな安全や快適性能の追求が、いざという時にだけ
現出するような類のものだと思ったら大間違いであるということ。

ライダーの入力に間髪入れずに反応するエンジンや、
切れるようなハンドルのレスポンスも、操っていてとても楽しいことは認める。
カミソリの歯を肌に当てて、皮膚が切れないようなギリギリの入力を
時速100kmを超える速度で出し入れする楽しさも分かる。

でも、コンマ1秒を争うようなクローズド・サーキットではなく、
人も自転車も四輪車も混走し、路面状況が千変万化するする一般道においては、
エンジンでも、ハンドリングでも、本当に乗り手が必要としている出力を、
必要な分だけ的確にデリバリーしてくれるオートバイの方が、
実は何倍も速く走れることは、オートバイとの時間が長い人ほど分かるだろう。

一見、黒子的な装備に見えて、
実はアクティブに乗り手に訴えかけてくる官能性能であることが
大枚はたいて、自分のものにしてはじめて解る。
そういう種類のオートバイなのだ。

そして、長距離を走れる性能や概念は、つまり、
長い時間付き合えることと同意義である。

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それまで多くの国産車に乗ってきたからこそ分かる、
ひとつ一つのパーツに施された表面処理や、外装の塗装の品質の高さ、
プラスチックパーツに至るまで、
10年車とは思えないような状態を今も維持しつづけている。
時に私の家にはガレージなどない。
10年間、保管はいつもボディカバーをかけるだけだ。

そしてそれは、外観を美しく保つということ以外にも、10年間の中で、
故障を含めた大きなトラブルに見舞われたことがほとんどないという
事実にもつながり、長い距離を安心して走破できる自信となってくれている。

走行距離はすでに8万キロを超え、低速トルクをはじめ、往時の性能は薄れ、
幾多のモデルチェンジを繰り返し、すでに水冷化されるまでに進化した
最新型のR1200GSに惹かれないと言えば嘘になるが、
未だ私のR1200GSから感じられる魅力に変わりは見受けられない。
何よりボクサーツインの味わい深いBMWらしい走りの感触は、
飽きるどころか益々好きになる一方だ。
最新型と較べても肩を並べられるほど今もまったく色褪せることがない。

ファッションや生き方にまで及ぶ、
独自の文化をも構築したアメリカのメーカーや、
美意識の塊のようなイタリアのメーカー、
徹底した学習と模倣によって、効率という価値観で世界を席巻した日本のメーカー、
そしてイギリスやオーストリアなど、各国色とりどりに様々な価値観や哲学がある。
そういった世界において、BMWというドイツのメーカーのアプローチは
外から眺めただけでは、なかなか分かりづらいものなのかも知れない。

オートバイは楽しいけれども、
危ない乗り物であるという真実。
オートバイは美しいけれども、
維持管理には手間がかかる脆くて儚いものだという誤解。
そういった諸々を、ライダーに背負わせたりせず、
メーカーとして真摯に向き合うことで
『一般道においては、安全で快適なオートバイこそが最速』であることと
『オートバイは、決して消耗品ではない』ことを身をもって証明してくれている。

そういった、オートバイが表現する趣味性や楽しさに対する
BMWという新たな価値基準が理解できたならば、もう他のメーカーのオートバイに
命を預けられないような魅力となってくれることだろう。

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無事5回目となる継続検査を通してきた。
果たして、あと何年付き合っていけるか分からないが、
この際、行けるところまで行ってみようかと、今は思っている。
  

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2015.09.16 | コメント(0) | トラックバック(0) | R1200GS

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