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JONY IVE

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昨日紹介したBREEの財布はBMWと同じくドイツ製だが、
Made in USAのAppleに、私が惹かれる部分もまた、
そんなふたつのドイツ製ブランドのもつ魅力と当たらずと雖も遠からず。

同じように一貫したフィロソフィによって、プロダクトの方向性が定められていて
「購入する」と言うよりも、「投資する」、もっと言えば「共感する」の方が
意識として近かったりもする。


そんなアップル製品のすべてに命を与えている人物と言って過言ではない
ジョナサン・アイブの本を読んだ。

こちらの本は自伝ではなく、そのほとんどを周りの人間の証言によって構成している。
まだ若く、自伝を用意するような時期でもないし、
多弁で支離滅裂、それでいて寂しがり屋の『スティーブ・ジョブズ』とは違って、
アイブはただでさえ控えめな英国紳士だ。
そして何より、徹底した秘密主義で知られるアップルの場合、
30年前のことであっても関係者はみな口を閉ざすのだという。

本人の余計な解釈が挟まらない客観性のある内容であるのはいいが、
見方を変えると単に調べられる事実が並べられるだけで、
しかも想像の域を出ないという前提において
アイブ自身の人となりや、横顔に触れることは残念ながらできない。

そんなわけで、
アイブの生い立ちやプロダクトデザインを学んだ環境などを綴った前半部は、
類い希な天才少年であったことは解るが、
ジョブズのような奇天烈な半生とはかけ離れた
いたって真面目な人間の、いたって真っ当な人生録なので、かなり退屈だ。

しかして、後半に入り
実際に彼が手がけたプロダクトに関する話題に移ると俄然面白くなってくる。

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私も飛びついて買った初代iMacから「ユーザーとの接点」として加えられた
「ハンドル」は、その後にうちのようなデザインスタジオで
デファクトとなったG5などにも受け継がれ、
すでにアップルデザインのアイコンと言っていい特徴となっている。

ひと度デスクの上に据えられたら、移動させる機会などほとんどない
デスクトップコンピューターに持ちやすいハンドルを着ける必要などない。
それらはそれまで取っつき難かったパーソナルコンピュータを
手に取れる、触れられる身近な存在にしようと試みる顕れであった。

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そして、G5に関しては、
iMacで採用した内部が透けて見えるデザインをさらに前進させて
スロットを含めた筐体の内部にまで徹底した見せるデザインが施されていた。
これは当時のPCフリークたちから、
カスタマイズの余地がないと批判され続けたことへの反論、
そして拡張性に対するAppleの答えだ。

ハンドルの哲学は、デスクトップコンピューターだけでなく、
現在私も使っているMacBook Airや、iPadにも受け継がれている。
この薄い筐体のエッジに向かって、ほんの少しのカーブを持たせることで、
そこに指を滑り込ませて持ちやすくするという意匠にそれは顕れている。
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そして、MacBook Airに触れたことのある方ならお解りかと思うが、
MacBookには、ふたが安易に開かないようにロックするノッチがない。
かといって意図しないタイミングで勝手に開いたりすることは決してない。

そして、アイブ自身が発明したヒンジ部分に内蔵された変速クラッチは
ふたが閉じられた状態からモニターの縁にやさしく手をかけて持ち上げれば、
キーボードを含む本体が釣られてしまうようなこともなくスッと離れ、
静々と開いていくその動きからは得も言われぬ感触が伝わってくる。
パーソナルコンピュータを「これから使う」という
ユーザーの意志に呼応させるような魅力的な “体験" をそこに施している。
そういった徹底したユーザーエクスペリエンスを実現するために
費やされた時間と労力、そしてブレークスルーした技術的問題が
並大抵なものではなかったことが本書を読むとよくわかる。

そして、アップル独自の製造方法と言っていい、
アルミボディを一体で削り出す『ユニボディ』。
そして、ユニボディの「シンプルさ」をさらに強調するための
摩擦圧接という特殊な溶接技術を究めることで、表面の段差を一切なくした。
そのためバッテリーすらユーザーが交換できないと酷評されるほど、
外部からのアクセスを拒絶するかの如き筐体を実現するために
メーカー直営のアフターメンテナンス工場を用意し、ユーザーが直すのではなく、
「メーカーが直す」というサービス体制にまで大きな転換を施すなど
彼が手を加える部分はもはやデザインという領域を完全に超越している。

「なぜそこまでするのか?」と、そこに疑問を挟む余地すらない徹底した
すでに怨念とも言えるユーザーエクスペリエンスへのこだわりがある。

「我々は芸術品を生み出しているのだ」

と言ったのはジョブズだが、本書を読むとアイブの掲げる
芸術性への思いや哲学が理解できると思う。
そしてそれらが、独善的な価値基準による行為ではなく、
本当の意味でプロダクトが人々の夢を叶えるデバイスとなり得ることの
実証となっていることに何より驚かされることと思う。

「信じないかもしれないが、アップルにとってはジョブズの死よりも
 アイブが辞める方が深刻だ」とまで言う者もいる。

それだけの逸材なのだから、移籍話や引き抜きの噂も絶えない。
しかして、
「このデザインチームをそのままどこか別の企業に移植しても、
 決して今と同じように機能はしないだろう」とアイブ本人が述懐するように、
デザイナーひとりの思いや考えだけで、それらが実現できることなどできない。

実際その途方もないアイデアを具現化するために費やされた投資額は
天文学的なものにのぼる。
いかにユーザーエクスペリエンスが大切だと言えども、
株主を含むステークホルダー全体がそういった理念や哲学を持っていることが
何より大切であることも深く理解することが出来る。

リーマンショック後に株主を説得できないことを理由に
さっさとF1から撤退した某国の自動車メーカーを見れば良く解る・・・

つまり、今後アップルと同じようなユーザーエクスペリエンスを提供できる
メーカーが誕生する可能性は、泣きたくなるほど低いこともまた
この本を読むとよく解る・・・・
それはそれで悲しくなるが、私にはアップルがある。と思い直すこともできる。
そんな一冊でありました。
  

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テーマ:Mac - ジャンル:コンピュータ

2015.06.11 | コメント(4) | トラックバック(0) |

コメント

初代iMac私も買いました。
箱から出す時にすごいどきどきしたのを思い出します。
そんでもって次に買ったのがPowerMacG5。
驚くほど静かでパワフル。
どちらも今見てもちっとも色褪せないのはさすがですね。

2015-06-11 木 11:40:14 | URL | さくらい #zHAUYs2U [ 編集 ]

さくらいさん
この感じはWindows使ってる人たちには
絶対に伝わらないんですよね・・・

2015-06-11 木 12:09:25 | URL | 埼玉のへそ曲がり #- [ 編集 ]

なんだかんだありますが、長く使ってもデザインも使い勝手も色褪せない。
 
未だにColor Classic II が欲しいです。

2015-06-16 火 09:26:37 | URL | Toshi #- [ 編集 ]

Toshiさん
外見Color Classicで、中身は最新
なんてものを造ってる人もいますからね〜

2015-06-16 火 11:33:41 | URL | 埼玉のへそ曲がり #- [ 編集 ]

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