F1 2016シーズン閉幕
Fomura-1 2016年シーズンは、
メルセデスAMG W07 Hybridを駆るニコ・ロズベルグが
参戦11年目にして初載冠を果たして終了した。
それにしてもいろいろあったシーズンでありました。
そのどれもが良い話ではなく、
世界的にその人気に陰りを感じさせるほどに悪い話ばかりで、
ファンとしては先行きに不安を抱かせる、気が気でないシーズンになりました。
その問題点として、何を置いても一番に言っておかないとならないのは
メルセデスAMGの独走状態、ほとんど独り相撲の今の状況だ。
ほとんどのサーキットで、一周1秒近い差が出るという横綱ぶりで、
ハミルトンとロズベルグの二人以外は勝てないので、事実上、
3位争いがレースの焦点になってしまっており、すでにレースにすらなっていない。
その圧倒的優位をルールで覆そうと、
主催者側があれこれ策を講じたのも結果的にはまずかった。
ひとつ目は予選形式の変更だが、これはすぐに元に戻された。
ふたつ目は無線によるドライバーズアシストの禁止で、
これも2戦ほどで解除されてしまった。
いずれも、試行されたルールがあまりに複雑すぎることが原因であったが、
ピットからドライバーに操作方法を指示しないと、
ドライバーが運転に集中できないようなクルマにこそ問題があると思う。
それらを招いているのも、結局のところチーム間の実力差を埋めるための
複雑なレギュレーションが原因で、それに上手い解決策を見いだせたのが、
メルセデスだけだったという本末転倒ぶりだ。
それが元でドライバーたちはピットから送られてくる情報を元に、
燃料やタイヤをセーブして走らなくてはならず、最速を決めるはずの戦いは、
いつしかエコ競争になってしまい、余計に人気を下げる結果につながっている。
2014年の鈴鹿GPでのクラッシュで死亡したジュール・ビアンキの事故を受け、
ドライバーの頭部保護に関する新たなデバイスのテストも話題を呼んだ。
そもそもオープン・ホイール、オープン・コクピットとして発展してきたF1に、
こういったデバイスが必要か否か。安易に答は出せないが、
多くのファンと同じように、私も伝統は守り続けていって欲しいと思う。
そんな揺れるF1の迷走ぶりも遠因であったと推測されるが、
アメリカのメディア関連会社、リバティ・メディア社が、
それまでのF1の所有者であるCVCキャピタル・パートナーズをはじめとする
株主からF1を取得するというニュースも今シーズン駆け巡った。
貴族気質の欧州支配から、より民族気質の高いアメリカの企業に買収されたことで、
エンターテインメントとしてのF1に、
様々な改革がもたらされることが期待されている。
そんなくすぶり続けていた諸問題が、
一気に吹き出したのが2016年シーズンだったように思う。
良い話ももちろんある。中でもファンを沸かせたのは、
マックス・フェルスタッペンがシーズン途中でレッドブルに移籍したことだ。
シーズン途中でドライバーを交代させるというのも前代未聞で、
成績不振を理由にレッドブルを降ろされたクビアトにしてみれば、
たまったものではないが、観る方の楽しみは一気に増えた。
それほどに17歳という若さでF1入りを果たした、フェルスタッペンへの期待感や、
翻って生まれる懐疑心は強く、まるでそういった世間の目に反発するように、
荒っぽいドライビングで勝負を仕掛ける走り方が、果たしてトップチームでも
通用するのか、大きな注目を集めた。
しかして、なんとレッドブルに移籍してほどなく初優勝を決めてみせてくれた。
もちろんそれは、メルセデスの同士討ちというラッキーがあってこそではあるが、
それにしてもフェラーリの2台を抑え込んでの優勝であったわけで、
この十代の若者の実力を早くも世に示すこととなった。
そして、先日の雨のサンパウロでの激走は、
そんなフェルスタッペンへの評価を確固たるものにしたと思う。
若き日のアイルトン・セナがそうであったように、
並み居る強豪たちに対して、既成概念に従わない、
若さ溢れる攻撃的な走りで戦いを挑む姿は、
奇しくもセナのホームグランプリで結実した。
そのフェルスタッペンも二世ドライバーだが、
チャンピオンとなったロズベルグも二世ドライバー。
ただ、フェルスタッペンと違うのは、父ケケ・ロズベルグも
F1チャンピオンであったという事実。
ちなみに、親子でF1チャンピオンになったのは
グラハム・ヒル、デイモン・ヒル親子に続いて二組目だ。
さておき、チャンピオンを決めた今季最終戦アブダビGPでのレース後、
妻のヴィヴィアンとチーム無線でお互いを讃え合う姿には、
(交わされたのは母国語のドイツ語ではなく、
テレビ放送を意識してか英語ではあったのが気になるが)
素直に感動させられた。
こういったあたりが、モナコGPの表彰式にジャスティン・ビーバーが来てしまう
独り者で遊び人のルイス・ハミルトンとは違うところで、
今シーズンも最速の称号は間違いなくハミルトンのものであったが、
その実力を素直に祝福してあげられない。
優勝してもロズベルグが3位以内に入ってしまえば逆転チャンピオンの可能性のない
最終戦アブダビGPでも、ハミルトンは自己最速タイムより2秒も遅い周回を繰り返し、
チームからの「ペースを上げよ」との指示(命令)を無視してまで、
ライバルチームを追いつかせて、ロズベルグの間に割って入らせようと画策していた。
ここはカッコ良くロズベルグをブッチギって優勝を決めて、
潔く結果を待つような2年連続王者らしい態度が、
そういった悪いイメージを払拭する意味でも、ハミルトンには望まれるところだ。
そんなわけで、今シーズンロズベルグがチャンピオンになった事は良かったと思う。
3年連続で、そんなハミルトンがチャンピオンだったらと考えると、
更にF1人気は下落傾向を加速しそうで、その方がゾッとする。
そして、総帥ロン・デニスの更迭で揺れるマクラーレン・ホンダですが、
日本人としては、やはりホンダの復活が早く観たい。
来シーズンはそんな物議を醸した車体レギュレーションが、
ラップタイムの大幅な向上を目的に大きく改訂され、
その見た目も、一昔前のF1を彷彿とされる外観に大幅に変わると言われている。
これでメルセデスの独壇場を阻止できるか注目が集まるが、
マクラーレン・ホンダには、そんな混乱を上手いこと抜き出て
大きな活躍を魅せて欲しいと心から願う。
4ヵ月後の2017シーズン開幕戦が今から楽しみだ。
2016.11.30 | コメント(0) | トラックバック(0) | 徒然
