ON THE ROAD
久しぶりに映画でシビれたな〜と、思った『ON THE ROAD』です。
いまではすっかりフォーマット化されつつある
このロードムービーというジャンルではありますが、
そんな価値観のど真ん中を突っ走っている映画です。
ともあれ、いまやそのロードムービーと一括りにされてしまいますが、
本作の原作はジャック・ケルアックの小説で、その名もズバリ『路上』。
1957年の出版というから、これがその元祖といっていいだろう。
「道中記」というベーシックな見解から、「セックス」「ドラッグ」に
象徴されるような、好奇心の強さ故に挑戦的で軽率な若者の放蕩と暴走を描くときに
「旅」ほどハマるフォーマットもないだろうというほど、
ロードムービーという手法によって描かれた青春映画は少なくない。
この作品、カンヌでは原作の意図を汲んでいないという理由で
かなり叩かれたらしいので、あくまでも私の好みの問題でしかありませんが、
これほどスタイリッシュに洗練されていながらも、
フランス映画のような終始重苦しい憂いを纏い
ただダラダラと群像劇を綴るようなこともなく、
ドラマとしてしっかり起承転結が完成されているロードムービーだと思いました。
私は好きです。
若者達は得てして無知をいいことに、「無謀に」「安易に」
危険で甘美な世界に飛び込んで行ってしまうものだが、
世の中の「しがらみ」から完全に自由なカリスマの出現によって、
更にそれらが加速されるということは現実社会においても良くある話だ。
そんな、周りを飲み込むように様々な世の中のルールから解放していく
完全な自由人がギャレット・ヘドランド演じるディーン・モリアーティ。
破天荒な強いカリズマを持ちながら、反面ナイーブで甘えん坊という、
複雑で、とても常人には理解しがたいディーンという人間の半生を、
サム・ライリー演じる主人公サル・パラダイスの視点で追っていく。
面白いのは主人公サルの成長を描きながらも、
見所はあくまでも、悪魔のようでありながらも子供のように無邪気な
ディーンというその存在自体にある。
「もちろんこんなハチャメチャな生き方が通るはずはない」
「バチが当たれば良い」と思いながらも、そういった枠にはまらない、
何にも囚われないディーンの生き方は観ていてとても痛快だ。
そして、『トワイライトサーガ』で一躍トップ女優の仲間入りを果たした
クリステン・スチュワートをはじめ、脇を固める俳優陣がスゴい。
『マン・オブ・スティール』のエミィ・アダムス
『エリジウム』のアリス・ブラガ
『ロード・オブ・ザ・リング』のヴィゴ・モーテンセン
『スパイダーマン』のキルステン・ダンスト
ちょい役で『レザボアドッグス』のスティーブ・ブシェミと
そうそうたる面々が顔を揃える。
それもそのはずで、制作総指揮はあのフランシス・F・コッポラ。
実はこの原作の映画化権をコッポラは1979年には手にしていたらしく、
イーサン・ホークにブラッド・ピットの組合せや、
ディーン役にコリン・ファレルを起用する企画もあったらしいが実現はせず、
要はお蔵入り寸前だったようだ。
しかして、それほどにコッポラはこの原作に惚れ込んでいたようで、
『モーターサイクル・ダイアリーズ』のウォルター・サレス監督を迎え、
やっと実現にこぎ着けた思い入れ深い作品のようだ。
で、これだけの俳優陣なのだから、物語の展開もさぞ濃厚なのだろうと思いきや、
そこはロードムービーですから、あっさり塩味。
旅の先々で出会う人たちも、もうほとんど景色みたいなものです。
そんな豪華な無駄遣い感が素晴らしい隠し味となってます。
さておき、若いからといって、ここまで脱線するか?という青春活劇を
ホラー映画として観るもヨシ。
誰しもが青春時代に通過した「希望」や「挫折」、
そのあとに訪れる「後悔」や「追憶」といった感情を呼び起こすもヨシと、
どんな観かたで観てもハズレのない映画かも知れません。
2014.05.30 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画
