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レディ・バード

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思い出すだけで身の毛のよだつような若気の至りなら、
誰にでもひとつやふたつはあるだろう。

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そんな誰にでもある若さ故の黒歴史を、
わざわざ時間を巻き戻して再体験するような
ちょっと痛すぎる映画がこの『レディ・バード』。

レディ・バードとは主人公クリスティンの自称。
その呼び名を周りの人々に強要するほど本名で呼ばれるのを嫌ったり、
地元のサクラメントをとにかく嫌い、ニューヨークへの進学を希望したり、
高級住宅地に住む男の子を好きになって、
その彼の仲間のお金持ちの女の子に、
自分も高級住宅地の住人だと嘘をついてまで取り入ったり、
大切な旧友を急に無視するように放って
お金持ちのグループに入り浸ったり・・・

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とにかくやることが極端でいちいち痛い。

そんな青春あるあるを見せつけながら、
今作が描きたい本題は実は微妙な母娘の関係。

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娘をカトリック系のお堅い高校に通わせたり、
心配が過ぎるが故に型にはめようとする母親と、
文字通りの思春期まっしぐらの娘の強烈すぎる反発。

まさに血は争えない同門対決。
笑っちゃうくらいに激しい紆余曲折の果てに、
だからこそ解り合える親子の強い絆を描いています。

スィート17モンスター』のような
キレのあるオフビートの効いた作品かと思いきや、
意外とホロりとさせられる感動作です。

近頃、湊かなえにはまっている私にとって、
その絶妙なズラしぶりが、かなりタイムリーな作品でもありました。
(オススメ度:70)

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2018.12.07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ボーダーライン ソルジャーズデイ

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ボーダーライン』の続編、『ソルジャーズデイ』。

毒をもって毒を制す。

正攻法で裁けない悪を、更に大きな悪で討つ。
結果、麻薬や移民の違法流入を防げるのであれば、
それは正義となるのかもしれない。

しかし、悪に染まればそれは敵と同化したことにはならないのか?
悪意は結局悪意しか生み出さず、
より大きな憎悪と化してまた自身に降りかかってくるのではないのか?

善悪の境界線(ボーダーライン)で描く究極の選択は今作でも続けられるのだが、
今回は作戦中にハシゴが外される、例の“トカゲの尻尾切り"に
主人公たちは見舞われ、前線に取り残された仲間を見放すのかどうか、
また別の選択を強いられてしまう・・・

残念ながら監督は大好きなドゥニ・ビルヌーブではなく、
それもあってか、作風もかなり違う。
それでもこの二作品が確実に地続きに見えているのは
間違いなく主演の二人、

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ベニチオ・デル・トロと

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ジョシュ・ブローリンのおかげだ。

それくらいこの二人の存在感がより際立つように作風が変えられている。

前作では麻薬戦争とはある意味部外者である、
FBIエージェントのエミリー・ブラントを配置したことで、
この歪んだ現実をどこか客観視したような作りになっておりましたが、
今回はそれがないことで、渦中のど真ん中の先頭にいる二人の男の葛藤に
まっすぐにフォーカスされていることも、前作との大きな違いだ。

ただ、これがSFでも虚構でもなく、
アメリカの麻薬戦争の実体であることを体感させた前作に比べ、
その説明を省けるぶん、
登場人物の心模様の変化を描くことにかなりの比重が置かれている。

私としては、すぐ身近に存在する、恐ろしいほどの現実ほど
非現実的に見えるという、前作の屈折した光の当て方の方が、
映画としては斬新で面白かったと思う。

とはいえ、そのぶんベニチオ・デル・トロの鬼気迫る演技が際立っていて、
地獄の際を歩くような運命に縛られた男の生き様を描く
ローガン』のような映画だと思って観た方がフィットするのかもしれない。
続編ではありますが、前作はこれの予告編くらいに思って、
最初からまったく違う作品だと思って観た方が吉かもしれない。
(オススメ度:60)

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2018.11.30 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

A GHOST STORY

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私のようなオールドタイマーだと、
ついデミ・ムーアの『ゴースト/ニューヨークの幻』の方を連想してしまうが、
物語も、主旨も、それとはまったく違う。

かといって、オカルトやホラーの類でもなく、より哲学的でいて概念的。
ひょっとするとSFの方が近いのかもしれない。

マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック、
ドラゴンタトゥーの女』のルーニー・マーラ、
二人の実力派俳優が、あまり多く話をしない
仲が良いのか悪いのか分からない静かに暮らす夫婦役を演じている。
(なぜ今、夫婦仲が微妙である必要があるのか、
 映画の最後に分かるようになっています)
そんな名優二名でありますが、彼らの出番はそう多くはない。

特にアフレック演じる男の方は、
映画が始まって数分で死んでしまうあっけなさだ。

そして、劇中のほとんどを男の幽霊の行動が占める
とても静かな映画でありながら、かなり実験的で意欲的な作品だ。

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それもそのはず、制作は『エクス・マキナ』、『ムーンライト』、『ルーム』など、
創設から6年足らずで多くのアカデミー賞作品を世に送り出す
新進気鋭のスタジオ『A24』。

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おじさんにはオバケのQ太郎に見えてしまわなくもないが、
この粗挽きな感じが作品の憂鬱さを一層引き立てている。

予告編を観ていると、遺した妻のことが心配で成仏できない幽霊のように
見えるかもしれないが、はっきりとこいつは地縛霊。

何かを待つためにその場所に居続けること、
何を待っているのかを忘れてしまうこと、
待っているものに出会えず、諦めて成仏してしまう霊もいることなど、
いくつかの霊界のルールが絵解きされる。

そうして、誰も見たことがない幽霊の生態が淡々と描かれるのだが、
人間の生き様のように迷ったり狼狽えたりもするし、
北極圏で暮らす白熊の生態のように自然の厳しさを思わせたりもする。
過去も未来も喜怒哀楽も姿カタチもない存在が、
それでも存在し続けなければならないということ、
その場所に縛られる様々な怨念を背負いつづけることが、
一体どれだけ切ないことなのかを、文字通りに切々と描き続けていく。
まさに知られざるゴーストのストーリーだ。

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全編を通してこのインスタグラムのような不思議な画角で描かれ、
それはまるでマウントされた35mmのポジフィルムを、
ライトテーブルの上に置き、ルーペで覗き込んでいるような世界。

この狭くて制限の多い画角を採用したことで、
カット割りとトリミングにはかなり苦労したと思うが、
その甲斐あって、この不可思議な物語を、
おとぎ話にも現実的な話にもしない、独特な世界として定着させている。

果たして、この映画が鑑賞料1,800円に値するのか?
そう問われて「YES」と答えられる人はそう多くないようにも思う。

でも、だからこそ、ハマる人には一生忘れられない作品になる(かもしれない)。
そして、できることならテレビではなく劇場で観て欲しい。
Netflixのようにデジタル配信前提の映画コンテンツを生み出すフォーマットが
多くの脚光を浴びる中、A24スタジオが、ともすればテレビ向きともとれる
こういった作品を、スクリーン用に製作していることを考えれば尚のことだ。

すぐに劇場での上映は終わってしまうかもしれないので、
もし、興味のある方は急いだ方がいいかもしれません
(観られなくて良かった。と、あとで安堵するかもしれませんが)。

(大好き度:100 でも、オススメ度:10)
  

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2018.11.22 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品 『渦』

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私も大好きな『ブレードランナー2049』を監督した
ドゥニ・ヴィルヌーブ。
もちろんこちらでも紹介させていただいた『ボーダーライン』(2015年)
メッセージ』(2016年)もお気に入りの作品たちだ。
こうなってくると、改めて彼の初期の作品を観たくなるのは純粋なファン心理。

そこで、まずは『渦』(2000年公開)を観ることにした。

古い作品なので、
今回は遠慮なくネタバレさせていただくのでご了承いただきたい。


この作品では生鮮の魚が多くの部分でメタファーとして配置されており、
冒頭いきなり捌かれる寸前の魚がストーリーテラーとして語り始める。
かなりシュールな作品で正直私はこのテの作品が苦手だ。
開始3分で観るのを止めようかとも思ったが、
なんとか踏みとどまって続きを観ることにしたのだが、それは正解であった。

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有名女優を母に持ち、
その財産を使って自身のファッションブランドを展開するビビアン。
彼女の中絶手術から物語ははじまる。
彼女の会社は経営不振が続き、そのため投資家の兄が管理する
母の財産は差し止められ、店舗は管財人に差し押さえられてしまう。

失意を酒で忘れようとするビビアンであったが、
飲酒運転でひき逃げ事故まで起こしてしまう。

酷く酔っていたため記憶が曖昧だったのだが、
翌朝クルマに残る人身事故の痕跡を確認して、
自身のひき逃げを確信するが、
自首する勇気も、逃げる気力すら失っていた・・・

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誰もが羨む時代の先端を行く立場から
一気に奈落の底へと落ちていくビビアン。

事実を受け入れずに現実逃避を繰り返していた彼女は
ひき逃げ事故を起こしたクルマごと、海に飛び込むことを思いつく。
そして、もし生き延びることができたら、
生きることを赦されたら・・・

そうして生き延びたビビアンは、まずは殺してしまった男性の葬式に向かう。
轢かれた被害者の男性は怪我をしたまま事故現場から帰宅し、
自宅で死んでいるところを発見されており、
事故現場も特定されないため犯人は分かっていなかったのだ。

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葬式会場で離れて暮らしていた潜水夫を務める被害者の息子と出会い、
近所の知人だと偽ったビビアンは
死んだ父親の荷物の整理を手伝うことになってしまう。

翌朝にはノルウェーに帰るというひとり息子と一旦は別れるが、
思い直したように彼を追いかけ、まさに飛行機に乗り込もうとする
タイミングで「忘れ物があるの」と、彼を引き留めます。

そうしてビビアンの家で一夜を共にした二人でしたが、
男は翌朝の朝刊でまさに自身が乗ろうとしていた飛行機が
墜落事故を起こしたことを知ります。

命を救ってくれたビビアンを天使だと言う男に、
「そうではない・・・」と自身の罪を告白するビビアン。
父親をひき逃げした犯人が、自分の命を救ったことに困惑しながらも、
男はビビアンに惹かれていってしまう・・・

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そしてビビアンもまた自身の犯してきた罪と向き合うことで
荒んだ精神が再生していくという物語。

途中、ビビアンがレストランで食べたタコが硬いと文句を言うシーンがあって、
そのタコを卸していた鮮魚店の目利きがひき逃げ事故に遭った男性で、
彼がいなくなったためレストランで供された
生タコの味が落ちたことが明かされるのですが、
一連の映像によって物事は常に連鎖していることを示唆しています。

彼が車に轢かれた後も何もせずに帰宅したのも、
彼の息子がビビアンと出会うこと、あたかも
ビビアンが息子の命を救うことと繋がることを知っていたかのように
観る者に感じさせます。

そんな、かなり現実離れしたおとぎ話のような手法で、
どこにでもある自己破壊と再生を描くことで
独自のリアリティを生み出しています。

かなりクセのある作品ではありますが、
脚本のもつ奇抜さの説明を放棄せずに
きちんと向き合っているあたりが、
観る人によっては一見不可解で不愉快にも映る世界観を
現実世界に着地させることに成功している凝った作品だと思いました。
(オススメ度:60)

今作以外にもヴィルヌーブが監督した『複製された男』(2013)も観てみました。
そちらの紹介はまた次の機会に。
  

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2018.11.16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ヴェノム

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サム・ライミ版『スパイダーマン3』にも登場した人気ヴィラン『ヴェノム』が、
ダークナイト・ライジング』、『ダンケルク』、
マッドマックス/怒りのデスロード』のトム・ハーディを主演に迎え、
完全な単独作として制作された。

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ダークヒーローと言えば聞こえは良いが、
そもそもこのキャラクターはヒーローなどではなく、
人間を補食対象とする地球外生命体。つまりは侵略者だ。

上の画像でも、夢にでも出てきそうなほどおぞましい姿をしているが、
むしろ憎悪をそのままカタチにしたようなキレ味スルドイ吹っ切れかたを
しているところが人気のヴィランであります。

そんな邪悪な悪役を主役に据えて単独作としているわけなので、
スーサイド・スクワッド』的にファッショナブルでコミカルな
ソフトランディングとするのか、
はたまた一気に『ハンニバル』まで突っ走るのか、そのあたりに注目が集まった。
これ以上はネタバレになるので言えないが、
軽く結論を申し上げれば、「置きに行ったな」とも言えるし、
「まあまあ上手いところに落としたな」とも言える。

その点に限ってのみ同じ悪役を主役に据えた
『スーサイド・スクワッド』を評価して50点だとしたら、
『ヴェノム』は70点くらいの出来映え。
それくらい適度に“悪”が主役の中に残されている。とは思う。

一説にはR指定前提の、かなりグロテスクなホラー描写も多数撮られていて、
そのあたりが配給元のコロンビアピクチャーズ(SONY)の意向で
40分近くゴッソリと削除されたとの噂もある。

個人的にはせっかくスパイダーマンと切り離して単独作としたくらいだし、
“そのために”トム・ハーディを起用したと考えるのがどう考えたって妥当なので、
一気にR25くらいまで突っ切って欲しかった。とは思う。

SONYという企業の大人の分別の付け方、
何より今後はトム・ホランドのスパイダーマンとの合流も視野に入れているらしく、
2匹目以上のドジョウを狙うならば致し方ない選択とも言える。
子供も観る(R15)マーベル作品であることを考えればこのあたりがギリであろう。

といった中途半端なことをして失敗した例を挙げれば枚挙に暇がないのですが、
誤解を恐れずに言えば、『シザーハンズ』のような演出の上手さも感じましたので、
楽しみにしていた人は期待して観て欲しいと思う。
エンディングに流れるエミネムのヴェノムのテーマも必聴です。

そして、例によってエンドロールに続編を匂わせる特典映像もあるので、
最後の最後まで席を立ってはいけません。
もちろん『アメイジング・スパイダーマン』の時のように、
そのまま続編がお蔵入りになることもなくもない。
(しかも、アメイジングの時は当初から3部作と公言していたのにお蔵入り)
期待しすぎも禁物ではありますが、公開1週目は好調の滑り出しだった様子。
しかも、ほんの数十秒のおまけ映像に、
わざわざ大御所俳優を起用しているところを観てしまうと、
つい余計に期待してしまうところではあります・・・
果たして続編の制作にSONYの重役たちのGOサインは出るのでしょうか?
(オススメ度:70)

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

2018.11.09 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

パターソン

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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のジム・ジャームッシュ監督
最新作『パターソン』。

米ニュージャージー州のパターソン市に暮らすバス運転手のパターソンは、
毎朝6時15〜30分に(目覚ましなしで)起床し、
隣でまだ眠る妻のローラにキスし、
ローラを起こさないように前日に用意しておいた着替えを持ってリビングに移動し、
朝食にシリアルを食べてから歩いて職場に出かける。

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出発前に進行を管理する同僚の世間話を聞いてからバスを発進させ、
毎日同じ路線のバスを定刻に運転し、
同じ時間に歩いて自宅に戻り、
妻と夕食を共にしたあとに愛犬の散歩に出かけ、
散歩の途中にあるバーで必ず一杯生ビールを飲んでから帰宅する。

そんな片田舎で平凡に暮らすパターソンの趣味は詩を書くこと。

毎日ちょっとした空き時間に筆を取り、
秘密のノートに思い立ったことを書き留めていく。

それ以外は特に目立った趣味もなく、
毎日時計で計ったように規律正しい生活を繰り返していく。

そんなどこにでもありそうな日常を切り取っただけの映画なのに、
観終わると、こんな幸せな時間はそうそう得られるものではないと、
誰もが思うであろう、ジム・ジャームッシュ独特の世界観は今作でも健在だ。

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ゴルシフテ・ファラハニ演じる妻のローラは、
パターソンと同様に物静かな性格ながら、
対照的にペイントや音楽や料理などクリエイティブな才能に溢れている。
多彩な才能を無邪気で自由奔放に解放しながらも、
夫への愛情の深さがスクリーンを通して伝わってくる天使のような魅力は
世の男性であれば誰もが羨む事だろうと思う。

もちろん、そういった女性の持つセクシャリティな魅力だけを言いたいのではなく、
パターソン自身もローラを愛すること、愛されることの幸せを充分に理解していて、
ローラから毎日受け取る宝石のような幸福感に包まれていることが
観る者の心にまっすぐ届いてくる。

時計の針のように進む一見変わり映えのない日常を、
執拗なまでに繰り返し描いているからこそ、どんなに小さな出来事であっても、
それが掛け替えのない幸せであることが(異様に思えるほどに)際立ちます。

どこにでもあるような日常に潜む幸せこそ、
奇跡と言えるようなものだということ。
よく言われることですが、幸せとは決して大げさな物ではなく、
何気ない日常にひっそりとあるものだということを、
改めて思い起こさせてくれる、そんな魔法のような映画です。
(オススメ度:80)
  

テーマ:WOWOW/スカパーで観た映画の感想 - ジャンル:映画

2018.11.02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

2001年宇宙の旅 IMAX版

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『2001年宇宙の旅』について、説明は一切不要だろう。
1968年に初公開され、それから50年ものあいだ
多くの映画関係者に影響を与えつづけた、まさにSF映画の金字塔だ。

今年、制作50周年を記念して
ダンケルク』、『インターステラー』のクリストファー・ノーラン監修による
70ミリ・ニュープリント版のフィルム上映が、
国立映画アーカイブにて6日間のみ行われた。
ほどなくしてこのIMAX版の上映も決定し、
もちろん70mmのニュープリント版にも興味があったが、
私はIMAX版の方に気もそぞろになってしまっていた。

あの壮大な世界観をIMAXの巨大なスクリーンと
最高の音響設備で堪能したい。

私が初めて観たのはまだ小学生のときで、
実はスターウォーズのあと。
そのときは宇宙旅行について胸を躍らされただけで、
今作をほとんどゴジラやガメラと同じ目線で観ていたので、
この作品の底辺に潜む問題提起や芸術的考察に関しては
一切関知することなどできなかった。
それから度あることにリバイバル上映やビデオで観返してきて、
この作品の持つ本当の真意に気づけたのは大学に行く頃になってからだ。

そんな、一度観ただけでは理解しきれない
難解さもあってのことなのかもしれないが、
重要なのはこれだけ時代を経ても、何度でも劇場で観ようと思えることだ。
そんな多くの人々の思いがあってこそ、
何度もリバイバルで上映され続けてきたのだろうが、
まさかIMAX版を観る機会がやって来るなんて、夢にも思わなかった。

とはいえ、まだCGなんて手法が
ほとんど確立されていなかった50年も前のSF映画が、
最新の上映システムに耐えうるのか。
心配がないわけでもなかった。



しかして、例のリヒャルト・シュトラウスの
『ツァラトゥストラはかく語りき』が場内に鳴り響くと
そんな邪推はすべて打ち消されてしまう。
むしろ、フレーミング、音響、独特な間の取り方、
タイトルのタイポグラフィに至るまで、
140分間の上映時間の一瞬一瞬のすべてにおいて、
細心の美意識で貫かれていることを改めて知ることとなった。

そこにはSF的なサスペンスやミステリー、ホラーの要素などはなく、
人類の進化と、その延長としての人工知能の生存本能の芽生え、そして、
自己防衛本能による殺人(戦争)という人類が歩んで来た残酷で純粋な進化を、
キューブリックの疑問と問題提起として、一切の不純物なしに描いていた。

人類史上初めて目にする映像芸術であり、
だからこそ生まれ得たこの作品の唯一無二の存在感は、
IAMXであっても破綻させられることはなかった。

それどころか、今作が難解さ故に繰り返しリバイバルされてきたのではなく、
究極的に映像美を追求していたことで、ここまで人々に愛されてきたのだ
ということを、IMAXだからこそ理解することができてしまった。

上映前、まだ間接照明が灯る中、オペラの開演のように、
オーケストラのチューニングのような不協和な旋律が場内に流れ、
観客に着席を促す演出も施される。
そして、作品の途中で15分間の休憩を挟むのもオリジナル上映を踏襲している。

エンドクレジットが表示され、場内の灯りが点いても
シュトラウス2世の『美しく青きドナウ』は
最後の一小節まで止むことなく鳴り響き、
まさにオペラを嗜むような世界観が映画館に広がるところも
今回の上映ではそのまま再現されていた。

11月21日には4K URTLA HD&HDデジタルリマスターの
ブルーレイがリリースされるそうだが、
まだIMAX版の特別上映の終了まで一週間あるので、
映画の歴史が変わった瞬間を、是非劇場で体感して欲しいと思う。
(オススメ度:100)

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

2018.10.26 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

Author:埼玉のへそ曲がり
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