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蜘蛛の巣を払う女

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ドラゴンタトゥーの女』の続編、『蜘蛛の巣を払う女』。

前にもこちらに書いたが、
リズベット・サランデルを主人公にした『ミレニアム三部作』の作者
スティーグ・ラーソンが他界し、その後、ダヴィド・ラーゲルクランツ
という別の作家が書き上げた続編を映画化したのが今作。
脚本家の書いた映画のための書き下ろし脚本ではなく、
原作の小説じたいがオリジナルの作家の死後に書き上げられたという
なかなか珍しいパターンによって生み出された続編映画だ。

暴力父から逃げた姉と、父親の元に残った妹。
姉はハッカーとなって同じ境遇の女性たちを救うヒーローとなったが、
妹は16年間に及ぶ父親の虐待に耐え、
父親の死後、父が築き上げた裏社会の組織を受け継いだ。

そんな姉妹がある事件でつながり、敵対する者として再会を果たす。
というリズベットの過去にも係わる内容となっている。

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そんな物語以前に『ドラゴンタトゥーの女』の世界観が踏襲されているのかどうか、
前作のファンとしてはそちらの方がずっと問題。

理由は分からないが、前作で強烈な個性を生み出していた
ルーニー・マーラもダニエル・クレイグも出演していない。
正直、劇場で観るべきかどうか、最後の最後まで悩んだが、
本当に公開が終了する最後の最後に観に行くことにしたのは、
前作を監督したデビッド・フィンチャーが総指揮を務めていたから。

んで、どうだったのかというと、
60%は別物だと思って観た方が健康的でありました。

やはり『ドラゴンタトゥーの女』のもつ、
ダークでいながらも、そこに強い希望を想起させるあの展開には敵わない。

ジョージ・ルーカスが去った後のSTAR WARSサーガに似ていなくもない。
地続きでありながらどこか別世界の物語。

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今回リズベットを演じるのはクレア・フォイ。
家庭内暴力を受けPTSDに陥った女性が
天才的なハッカーとなって、社会の裏の仕事をこなしていくという
アウトラインは変わらないものの、
その技術はハッキングに留まらず、すでにジェームズ・ボンド並み。
っていうか、女性なので『アトミック・ブロンド』並み。
そういった諜報機関で訓練されてきた両雄と肩を並べるほどの特殊技能を
どこで身につけたのか?については甚だ疑問だが、
それもこれも前作を観ているから気になってしまう部分。

リズベットの過去が暴かれる点も見所だという触れ込みでしたが、
このリズベットは私にとってはもう別人なので過去の経緯もすでに見所ではない。

『ドラゴンタトゥーの女』でリズベットが性的暴力を受けるシーンなど、
かなり際どい表現が多く、彼女が平常心を維持できなかったことを
観る者に直接的に映像で伝えてきたが、今作ではかなりマイルド表現。

それ故、ルーニー・マーラ演じたリズベットの壮絶な過去なら是非知りたいが、
マイルドなリズベットの過去に興味はない。

残虐シーンが多くカットされたと噂される『ヴェノム』に似てるかも。
今の映画界はダークヒーローには生きづらい世の中だ。


とかなんとか、好き勝手に文句を並べたが、
じゃあつまらなかったのかというとそうでもなく、
違うモノだと割り切れれば楽しんで劇場を後にすることはできた。

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妹のカミラを演じるのは『ブレードランナー 2049』で
戦闘能力に長けた女レプリカント、ラヴを映じたシルヴィア・フークス。

今作でも物静かで美しい姿の裏に、
冷徹な凶暴さを宿す女性を映じて切っていた。

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というわけで、
返す返すも『ドラゴンタトゥーの女』は名作だったと再認識。
確かにクレア・フォイ演じるリズベットも魅力的でしたが、
ルーニー・マーラが演じたリズベットの
何者も寄せ付けない仄暗さの裏に隠れた分厚い情熱と、
それでいて女性らしい幸せを願う情念を併せもつ、
大胆でいて繊細な女性像が相手ではあまりに分が悪かった。
と言わざるを得ない。
(オススメ度:60)

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2019.02.15 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ウィンド・リバー

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ワイオミング州のウィンドリバーというネイティブアメリカン保留地内で、
野生生物局のハンターを務めるコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は
家畜を荒らすピューマを駆除するために雪の山中に分け入る。
そのピューマ捜索の途中、裸足で何処からか逃げてきた女性の死体を発見するが、
レイプされた痕跡も明らかなその女性の変死体は、
コリーのネイティブアメリカンの親友の娘、ナタリーであった。

コリーは第一発見者として、部族警察長ベンとともにFBIの到着を待つが、
そこにやってきたのは、たまたま近くにいただけで駆り出された
新米の女性FBI捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)であった。

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そうして地元の地理や風習にも精通するコリーも事件の捜査協力を依頼され、
新米FBI捜査官とともに事件の真相に迫っていくことになるのだが、
コリーもまた地元のネイティブアメリカンの女性との間にもうけた
最愛の娘を殺された過去を持ち、その真犯人も見つかっていないままであった・・・

なぜナタリーは周囲10km圏内に誰もいない場所に、
しかもなぜ裸足でいたのか?

雪に覆われた広大な山奥で起こった密室殺人のような難解な事件を追うのは
新米の女性捜査官と地元のハンターという、
異例な組合わせの捜査チーム。
果たして、若い女性ばかりが狙われるウィンドリバーに隠された秘密とは?


といったところが今作の見所なワケなのだが、
今作が描きたかったのはそういった謎解きだけではない。
ミステリーな設定は、あくまでもネイティブアメリカン保留地という場所に
今も残る迫害と差別の歴史を伝えるための装置でしかなく、
アメリカという国が、その歴史上に背負った薄暗い過去の暴露に他ならない。

前評判とは違って、とてもテーマの重い作品でありました。

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大自然を生き抜くプロ中のプロのハンター。
どういった因果でこの土地にやってきたのかは語られないが、
白人である彼がこの土地で住民たちからの信頼を勝ち取るまでに
並々ならない紆余曲折があったことは、物語の端々で描かれる。

最愛の娘を殺され、それを機に妻とは別れ、
影をまとい寡黙に仕事をこなしていく男っぽさがやけにかっこいい。
ジェレミー・レナーにとって一番のハマリ役だと思う。

真相の深さ以上に、この男っぽさが必見のハードボイルドものでもあります。
(オススメ度:70)

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2019.02.08 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ミスター・ガラス

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『アンブレイカブル』と『スプリット』の世界を融合させた
M・ナイト・シャマラン監督の新作『ミスター・ガラス』。

今作の製作はすでに『スプリット』のラストにブルース・ウィリスがカメオ出演し
「アンブレイカブルの世界と激突する」とのテロップが提示され
ファンを喜ばせてくれた。

これが『スプリット』の草案段階から企画されたものなのか、
製作中に思いついたものなのかは分からないが、
2つの世界で暗躍していた異能者たちが集合するというアイデアは、
いまどきのアベンジャーズスタイルともとれるが、
社会の裏側に蠢くようなダークな世界観に光を当てるシャマラン監督ならばこそ、
それとは違う独自の世界観が予想され、余計にワクワクさせられるものでありました。

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列車事故から無傷でただ一人だけ生還した不死身の男。
その事故をきっかけに、触れただけでその人間の「罪」が見えるようになり、
不死身の肉体を使い人知れず社会の裏側で悪人を退治していた
デヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)。
ネット社会では「監視人」と呼ばれ謎の存在として名を馳せていた。

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『スプリット』の題名の通り分裂した24の人格を併せ持つ多重人格者
ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)。
女性人格や9歳の子供、アーティストなど、人格の個性は豊かで、
それぞれの人格もその存在を恐れるほど凶暴で、
しかも銃で撃たれても死なない強靱な肉体へと変貌してしまう
「ビースト」と呼ばれる人格もその中に隠されている。

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非凡なIQを持つ大量殺人犯。
骨がガラスのように砕けてしまう難病を抱えていることから
『ミスター・ガラス』と呼ばれる。
社会の歪みによってスーパーヒーローは誕生すると言う自説に基づき、
ダンの乗っていた列車を脱線させ多くの人々を死に至らしめたのもこの男。
コミックの中の世界を真実だと信じ、『アンブレイカブル』ではダンを、
今作ではケヴィンを超自然的な孤高の存在であると信じさせ
その力を覚醒させて持論の正当性を証明しようと画策する。


_ _ _ _ _ _ _ _ _注意:以下、ちょっとネタバレ _ _ _ _ _ _ _ _ _


そんな三人が研究対象として厳重な精神病棟に集められ、
そうしたヒーロー願望が妄想であることを植え付ける処置が施される。
最初に収容されていたミスター・ガラスは、
薬物投与によって意志薄弱の状態にされていたはずだったのだが、
ダンとケヴィンを世界中の注目が集まる高層ビルの除幕式の会場で対決させ、
超自然的能力の存在を世界中に暴こうとする。

しかして、その裏では第3の謎の勢力がその存在を抹殺しようと暗躍していて、
そんなミスター・ガラスの謀略も防がれるように思われるが・・・


M・ナイト・シャマラン好きの私としては
もう観ないわけにはいかないので、
内容的にスベってもこの際致し方なしの覚悟で劇場に足を運んだ。

マニアックなシャマラン作品の中にあって、
『ミスター・ガラス』は更にエッジな作品ですので、
今作の私の評価はあまりアテにはならないかもしれません。
って、いつもあまりアテにはなっていませんが。

しかして!1月18日から公開された全米での興行収入は
多くの予想を裏切る好発進だったようで、
本国でのシャマラン人気を裏付けるものだった様子。
この週末は「MRK(マーティン・ルーサー・キング)ウィークエンド」と呼ばれ
全米中が統一して休みになる週末なので、
そこで公開される作品の興行収入はかなり注目されるのだそうだ。
そこでこの週末の歴代3位の好発進を見せたというのだから、
今作の人気のほどが伺える。

私的には最後の最後で二転三転と畳みかけるように
どんでん返しさせるあたりはさすが『シックスセンス』の
シャマランらしいと思えたが、
三人の対決の結末にはちょっと消化不良・・・かなぁ〜

それは三人のアウトラインを個別に描く時間が足らなかったからに思える。
そこを丁寧に描いてから、ただの力比べみたいな勝負ではなく、
なぜ三人は命をかけて対決しなければならなかったのか?
その真の意味について考えさせた方がシャマランらしかったように思います。

その足らない部分を観る側が補完する気があるのかどうかが
最終的な評価や満足度に繋がるものと思われます。
つまり、この作品への期待度(愛情)のあるなしですかね。

そういう意味でも
全米ではかなり期待されていたという証なのだと思われます。

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シャマラン作品への期待度の高さに加えて、
アニャ・テイラー・ジョイ好きの私の場合は
更にお釣りが来ましたけどね・・・(幸)
(オススメ度:50)

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2019.02.01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

アリー スター誕生

スター誕生



予告編にある通りの、歌手を夢見る女性が手にした
アメリカンドリームを題材にした映画だ。

でも、この予告編から想像されるような順風満帆のサクセスストーリーではない。
もちろん、どんな青春映画でも恋愛映画でも、
起承転結になるような山あり谷ありが用意されているわけだが、
今作はそこに更に残酷と言っていい深い谷が用意されている。

正直かなり後味の悪い物語なのだが、
それは、これが純粋な恋愛映画だと思って観に行ったせいだ。
私は完全にケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストン主演の
大ヒット作『ボディガード』を観に行く気分で観に行ってしまったので
かなり強めにはじき返されてしまった。

実は今作は1937年に公開された『スタア誕生』の3度目のリメイク作品。
残念ながら私はそのどれも観ていないので、
あの後味の悪い最後の展開が同じなのかどうかは分かりません
(少なくとも1976年版は同じらしい)が、
絶頂期を迎えた酒浸りのシンガー(もしくは俳優)と、
そのシンガーに場末のバーで見いだされ、
想像を超えてその才能を開花させていく女性によって、
自身への自信を喪失していく男との完全なすれ違いを描くという
基本プロットはオリジナルから踏襲されているようだ。

スター誕生2

さておき、レディ・ガガの歌唱力はすでに疑いようのないホンモノなので、
発掘された才能ある女性シンガーという役柄の説得力がもの凄い。

加えて、ガガの良い意味で洗練されていない田舎娘ぶりが、
完全にこの役にはまっていると思う。
あれだけの成功を収めている人で、これだけ市井の普通っぽさを
醸し出せる人ってそうそういるもんじゃないと思う。
これがレディ・ガガのはじめての本格的な女優業だということも
役作りの上ではプラスに働いたのかもしれない。

ある女性が誰かのために生きることと、
自身の夢を追うことを両立させようとしたとき、
運が良いとか悪いとか、成功とか挫折とか、
想像以上の苦難の道が待ち受けていることを描いています。

良い映画ですが、決して楽しい映画ではないところが
クラシックらしい重めのラブロマンスと言えるかもしれません。
(オススメ度:50)

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2019.01.18 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ボヘミアン・ラプソディ

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ここまでヒットしてしまうと逆に観に行けないへそ曲がりな私である。
おかげさまで『カメラを止めるな』も観てません。
たぶんWOWOWで放送されるまで観ないと思います。

現在も大ヒット上映中の『ボヘミアン・ラプソディ』を
ある程度ほとぼりの冷めた今頃になって観に行ってまいりました。

が、
劇場で観ておいてほんと良かった。
IMAXで観ておいてホントヨカッタ。

物語としてはクイーンという伝説のロックバンドの知られざる舞台裏を描いた、
言ってみればよくある伝記物で、どのバンドでもあるであろう
メンバー間の確執や対立、お金の問題、家族や人種の問題、
そしてそこからの和解や、雨降って地固まる的に更に強まる
絆などが描かれる。

天才故に繊細で、社会や親や仲間に反発したり、
周りの人間たちに利用されて裏切られて傷ついたり、
何よりゲイであることに戸惑い、最後はHIVに感染してしまう。
そんなフレディ・マーキュリー独自の悩みや葛藤もあるにはある。

でも、大なり小なりこういった問題や物語はどのバンドにでもあるであろうし、
問題の深刻さや滑稽さなどでバンドの伝記物を計るならば、
私にとって『ストレイト・アウタ・コンプトン』を越える作品はないと思っている。

そして、最近流行の「実話モノ」という観点で見れば、
先週書いた『I, TONYA』や、『スノーデン』、『バリー・シール』の方が
ずっとぶっ飛んでいて、現実は小説よりも奇なりを地で行っている良作だと思う。


なのに、だ。

『ボヘミアン・ラプソディ』を観て涙が溢れてくるのは、
クィーンの音楽性の高さに他ならない。

もう理由とか哲学とか、物語とかはこの際どうでもよくて、
この音楽を奏でることのできる人間が、もうこの世にいないことへの悲しみ。
映画の冒頭から彼を失うことが分かっていて、
そこにあの名曲たちが次から次へと流れてくる。
喪失感というたった一点だけで私の心を強く締め付けてくる。

私にとって、フレディ・マーキュリーは、
ある意味アイルトン・セナと同じレベルの存在であることが理解できた。

今作がこれだけヒットしているのは、
リアルタイムでクィーンを聴いていたおじさんおばさんだけではなく、
若い方々も含めた多くの人にクィーンの音楽性がマッチしたためだと思う。

実際、隣に座っていた大学生くらいの男性は、
そのまた隣に座る友人との話しぶりから2度目の観劇であることが伺え、
オジサン達と同様に物語の結末を知っているためか、
中盤からずっと肩を震わせて泣いていました。
(まあまあ邪魔くさかったけど)

だから、あの名曲たちを、ライブで聴くように体感できる、
IMAXでの観劇は今作では必須でありました。
観る前から何となく出来映えは分かっていたので、
「通常上映でいいか」とか思っていたのですが、
上映時間の都合でIMAXで観ることになってホント良かった。

さすがに上映中に歌って叫べる『応援上映』までは興味がないのですが、
一緒に歌いたいその気持ちも良く分かる。
(オススメ度:80)

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _

さて、少々早いのですが、
今回をもちまして、
年内の更新は最後とさせていただきます。


皆さま、今年も当ブログをお読みいただきありがとうございました。
正月は元日から北の大地に行ってまいります!

新年も少々ゆっくりさせていただき、
15日(火) からの更新を予定しております。

それでは、皆さまに最高のパウダースノーと最高の波、
そして最高の新年が訪れますように!

皆さま、良いお年をお迎えください!
  

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2018.12.21 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

I, TONYA

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1994年、リレハンメル オリンピック アメリカ女子フィギュアスケートの
代表選考も兼ねた全米選手権の練習後に、
当時一番の代表候補であったナンシー・ケリガン選手が、
何者かに膝を強打されるという信じられないような事件が起きた。

その世界を震撼させた「ケリガン襲撃事件」を主謀したとされたのは、
ケリガンの最大のライバルであったトーニャ・ハーディングであった。

今作はその舞台裏を追った物語。

もちろん、真相は今も闇の中で、
今作で事実として語られる内容や、
トーニャに肩入れされたともとれる考察の仕方も、
冒頭にテロップで記されるとおり、
そのことは制作者サイドも充分に理解していて、
かなり偏って描かれていることは間違いない。

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貧しい家庭で育ったトーニャは、4歳のときに
母親に無理強いしてフィギュアスケートの教室に通わせてもらう。
そして、たった半年習っただけで大会に出場し、年長者を退けて優勝してしまう。

それを機に、スケートに無関心だった母親も、娘の才能に荷担しはじめるのだが、
そもそも粗暴で暴力的な躾け方を繰り返すDVな母親であったため、
良い意味では強靱な精神を身につけながらも、
小さな心に重大なトラウマを背負いはじめてしまう。

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しかして、そんな状況が逆にバネとなって、
スケートの実力はメキメキと上達していく。
全米でも注目されはじめた17歳の時、
トーニャはその後結婚するジェフ・ギルーリーと出会う。

運命的な出会いであるワケなのだが、ジェフもまたDV男で、
歯車はすべて悪い方に流れていく種類の運命、
まさしく「運の尽き」であった・・・

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暴力夫ジェフとの出会い、
ジェフの友人で襲撃事件を実行犯に指示したとされるショーン・エッカートは、
トーニャのボディガードを自称する妄想癖のある男で、
そうした負の存在たちがトーニャの歯車をより一層悪い方に回していく。

といった事件の裏側をトーニャを中心に描いていくわけだが、
今作の中心にあるのはもちろん事件の真相ではない。

上流社会の住人にのみ許され、
どれほどアスリートとしての実力を備えていようとも、
豊かな家庭に生まれ育った淑女を象徴する存在でなければ
芸術点という点数を与えられない、
階級的で、封建的なフィギュアスケートというスポーツ。

母親の5番目の夫との間に生まれ、
貧困家庭で育った女性が、そんな世界に挑み、
様々な壁や重圧をはね除けるために暴力という力を選んだこと。

それは、肯定されるものでは決してないが、
だからといって一切の理解も共感も許されないようなことではない。
そんな、アメリカが抱える格差社会や貧困が生み出す様々な問題点を、
今作もまた暴いていると言っていいと思う。

もちろん、過去にあったとんでもない事実を、
のぞき見趣味で観ても面白いし、
アメリカという大国の裏側に潜む身近な悪夢を、
その完全な逆サイドで成功した大富豪が大統領である時代に
観ることの可笑しさを体験しても面白いと思う。
(オススメ度:もうレンタルできるし、80)

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ちなみに、
劇中いちいち「アメリカで最初にトリプルアクセルを飛んだ女性」と、
トーニャ・ハーディングを形容するが、
女性ではじめてトリプルアクセルを飛んだ選手は、
誰あろう日本の伊藤みどりさんだ。

「世界で2番目に」とは決して言わないところにも
アメリカという国の居丈高な姿が伺えて面白い。
  

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2018.12.14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

レディ・バード

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思い出すだけで身の毛のよだつような若気の至りなら、
誰にでもひとつやふたつはあるだろう。

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そんな誰にでもある若さ故の黒歴史を、
わざわざ時間を巻き戻して再体験するような
ちょっと痛すぎる映画がこの『レディ・バード』。

レディ・バードとは主人公クリスティンの自称。
その呼び名を周りの人々に強要するほど本名で呼ばれるのを嫌ったり、
地元のサクラメントをとにかく嫌い、ニューヨークへの進学を希望したり、
高級住宅地に住む男の子を好きになって、
その彼の仲間のお金持ちの女の子に、
自分も高級住宅地の住人だと嘘をついてまで取り入ったり、
大切な旧友を急に無視するように放って
お金持ちのグループに入り浸ったり・・・

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とにかくやることが極端でいちいち痛い。

そんな青春あるあるを見せつけながら、
今作が描きたい本題は実は微妙な母娘の関係。

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娘をカトリック系のお堅い高校に通わせたり、
心配が過ぎるが故に型にはめようとする母親と、
文字通りの思春期まっしぐらの娘の強烈すぎる反発。

まさに血は争えない同門対決。
笑っちゃうくらいに激しい紆余曲折の果てに、
だからこそ解り合える親子の強い絆を描いています。

スィート17モンスター』のような
キレのあるオフビートの効いた作品かと思いきや、
意外とホロりとさせられる感動作です。

近頃、湊かなえにはまっている私にとって、
その絶妙なズラしぶりが、かなりタイムリーな作品でもありました。
(オススメ度:70)

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2018.12.07 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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Author:埼玉のへそ曲がり
オートバイと
スノーボード。
近ごろ波乗り。

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