ライオン 〜25年目のただいま〜

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歳のせいか、最近すっかり涙もろくなってしまった。
そもそも涙もろい方ではありましたが、
近ごろは自分の意志で溢れる涙を止められない。
涙腺の蛇口が壊れているようだ。

というわけで、先週の『この世界の片隅に』につづき、
(私の場合は)涙なくして観ることのできない作品、
『ライオン 〜25年目のただいま〜』を紹介したい。

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主人公のサルーは、5歳の時、
働きに出かける兄に付いていったときに、居眠りしてしまった汽車で、
家から1,600km離れたコルカタ(カルカッタ)まで連れて行かれてしまう。

まだ言葉もままならないサルーは、
自分の家の住所も間違った発音でしか話せないので、
助けようにも家を見つけることは出来ず
そのままコルカタの孤児院に預けられてしまう。

ただ、幸いなことに、オーストラリアに暮らす夫婦が、
サルーを養子に迎えたいと申し出て、
その先の人生をオーストラリア人として成長していくことになる。

何ひとつ不自由ない暮らしを続けるサルーであったが、
記憶の片隅で自分を待つ、兄と母の幻影から逃れられなくなっていく・・・

と、ここに私がわざわざ書き足さなくても、物語は予告編にあるとおり。
今作も良い意味でシンプルで、ストレートな、とても分かりやすいお話だ。
やはり分かりやすい作品が良いに決まっております。

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主役は『スラムドッグ$ミリオネア』『CHAPPiE』のデーブ・パテール。
サルーを養子に迎える夫婦の妻役を、
オーストラリア出身のニコール・キッドマン、

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サルーの恋人役を『ドラゴン・タトゥーの女』『サイドエフェクト』の
ルーニー・マーラが演じ、なかなかの豪華俳優陣だ。

それだけに、内容にも手抜かりはない。
なかなかの大作に仕上がっております。

ストリートチルドレンの数が50万人にものぼると言われる
インドの格差社会の現状や、自身の出産を我慢してまで、
そうした困窮する子どもたちを養子に迎える夫婦の存在、そして何より、
主人公がGoogle Earthをはじめ、誰でも使えるインターネットによって、
わずかな記憶に残る自身の生家を見つけ出すという物語は、
実話だからこそ、観る者の胸に響くことばかり。

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こちらはこの物語の張本人であるサルー・ブライアリー氏ご本人。
プロモーションで日本にもいらっしゃったようです。

映画の最後にサプライズのように挿入される実映像は、
思い出すだけでまた泣けそうです・・・・

近ごろ心が渇き気味のあなたに〜
オススメ度:80

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2017.10.13 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

この世界の片隅に

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私の父は新潟の出身で、直接戦火に晒されることはなかったし、
母は川崎の出身でしたが、戦時中は函館に疎開していた。
父も母も、子供だったこともあり、兄弟共に徴兵されることもなく、
そんな父母や叔父、叔母に戦争の話を聞いても、授業で聞いたような話とは、
少しばかり違っていた。

『永遠のゼロ』など、戦地に赴いた兵隊たち、
その兵士たちの帰りを待つ人々を描いた物語は多いが、
逆に、戦時中の日本国内はどうだったのかについて、
映画化されることはなかなか少ないと思う。

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第二次世界大戦前夜。
広島で生まれ育った「すず」が、呉の男性に見初められて、
軍港の街、呉に嫁いでくる話なので、
ネタバレでも何でもなく、原爆投下と終戦でこの物語は結ばれる。

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でも、軍港から少し離れた高台に暮らす家族にとって、
空襲と、何より戦争は、少しだけ遠くの出来事のように描かれている。

そんな距離感が、私の父母から伝え聞いた話と符合していた。
もちろん、新潟と呉では状況にかなりの違いがあるし、
(実は父の故郷に近い新潟港は、当時満州と東京を結ぶ重要な拠点で、
 アメリカ軍は新潟市への原子爆弾の投下を計画していたという話もあり、
 あながち無関係でもないのですが)
実際、主人公は兄を戦地で亡くすなど、過酷な状況に追い込まれている。
何より主人公は父よりもずっと年上であるので、
その距離感を同一には語れないが、でも、
どこか他人事のように話す父の言うこと、
そしてそれを少しだけ恥じるように話す父のことが、
この映画を観て、少しだけ理解できたように思う。

『はだしのゲン』や『火垂るの墓』とは違って、
そんなふうに、少し戦争を達観しているところ、そして、
主人公のすずが、あまり動じない、とてもおっとりとした性格であることが、
戦争という特殊な体験を日常とする者の、
独特の視点となって切り取られています。

戦時中に暮らす人々の心の内側を、生々しくではなく、
むしろ、その強さだけを抜き取るように清々しく描けるのは、
アニメーションでなければ伝えられない表現だと思います。

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海外でも高い評価を得ていると聞きます。
この物語が、世界中で観られていることは、
日本人としてとても誇れる事だと思います。

ふだんアニメーションをご覧にならない方でも、
是非観ていただきたい作品です。

オススメ度:100(絶対に観て欲しいと思います)
  

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2017.10.06 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ロブスター

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世の中に独身者のいない社会、
独身者は隔離され、最期は動物に変えられてしまう社会。

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注:以下、ネタバレします。
予告編を観て、興味が湧いたら迷わず本作を観て、
観終わってからこの先を読んでください。

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理由が何であれ、離婚してしまい、独身者に戻ると逮捕され、
『ホテル』と呼ばれる更生施設へと送られてしまう。
そこで行われる様々な婚活パーティーを通して、
45日間で新たなパートナーを見つけなければ、その施設を出ることができない。
もし、その45日の間にパートナーを見つけられない場合は、
特殊な“装置"によって、入所時に自身で指定した
「動物」に変えられてしまう。そういう世界。

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その世界では、パートナーとの相性がとても重視されていて、
更生施設では、婚活パーティーの他にも、
パートナーとの関係を深めるためのマナーアップ講座も開催され、
中には、パートナーが食事中に喉に物を詰まらせたときの対処法なども
レクチャーされていたりする。

もちろん中には、45日間でパートナーを得られず、
動物にされることを恐れて脱走する者も現れる。
追っ手を逃れた独身者たちが集まり、
森の中で彼らだけのコミュニティを作り、隠れるように暮らしていた。
しかして、そこでは既婚者の世界とは逆に「恋愛禁止」が徹底されていた。

更生施設に送られた人たちは、麻酔銃を与えられ、
森に潜む独身者達を「狩る」仕事もこなさなければならず、
しかも、一人独身者を捕獲するごとに、
45日間だけだった期限が延長されるルールがある・・・・・という世界。

その施設に収容された、もしもの場合は「ロブスター」に変えられることを
希望するデヴィッド(コリン・ファレル)も、新たなパートナー探しをはじめるが、
そこで選んだ相手は、考えられないような冷血漢で、感情が全くない女性であった。
その女性は、感情のない代わりに、狩りの能力に異常に長けていて、
それまでに多くの独身者を捕獲しており、
すでに125日間の活動猶予を得ているほどだった。

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もちろん、ただ施設を出たいという思惑で、
手短に相手を選んだだけで、そんな感情のない相手とは長く続くはずもなく、
デヴィッドはその相手を「動物に変えて」森の中へと逃げ出してしまう。
そうして独身者だけが暮らすコミュニティで暮らしはじめたデヴィッドであったが、
こともあろうか、そこで運命の相手と言っていい、
「近視の女」(レイチェル・ワイズ)と出会ってしまう。
しかして、そこはもちろん恋愛が禁止された世界。

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二人が愛し合うことを独身者たちにも知られてしまい、
いよいよ居場所を失った二人は果たして・・・・


という、不条理極まりないな世界を舞台にした、かなり奇想天外な物語。

結婚とは何か?社会とは何か?
ほとんど冗談にしか感じられない舞台設定によって、
世の中に存在する「モラル」や、「社会適合性」といった
思想や価値観に波紋を与える、『コンビニ人間』にも通ずる、
強い風刺の効いた物語でありました。

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カンヌでパルムドールを獲得し、アカデミー賞では脚本賞にノミネートされた
本作のメガホンをとるのは、ギリシャの監督であるヨルゴス・ランティモス。

映画の冒頭で、車から降り立った女性が、草原に佇む黒いポニー(小型馬)を
銃で撃ち殺すシーンからいきなり始まる
(観終わると、その女性はポニーにされた誰かの近親者、ひょっとすると、
 別れた奥さんかもしれないと思い至る)
今作は、そんな舞台設定のみならず、その演出もかなり奇抜だ。

上に書いた私の説明も、観終わってそうだと気づいたもので、
不可解な時代背景や、舞台設定、施設のルールや、この世界のあるべき目的など、
劇中では一切の説明も解説もなされないまま、
観る者はある意味放置されたままで、この迷宮のような物語の中に放り込まれる。

でも、トリセツがなくても使えてしまうiPhoneのように、
そんな極めて理解しがたい設定や、この不条理な世界のルールが、
観ているうちに不思議と理解できるようにできていて、
そういった部分にこの監督の持つ非凡な才能を垣間見ることが出来ます。

奇抜でブラックなコメディ、もしくは下品なB級作品のようでいて、
実はもの凄くしたたかな計算と、
緻密に練り上げられた脚本を持たされた作品でありました。

松本人志が観たら、これはかなり悔しいだろうなあ。と思わずにいられない
そっち方面の良作であります。

オススメ度:70
  

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2017.09.29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

エイリアン:コヴェナント

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このブログをご覧の皆さまの中に、
どれだけ、エイリアンと、リドリー・スコット好きがいるのかは分かりませんが、
もしいるとしたら、その皆さん全員と祝杯をあげたい。
そう思えるほど、『エイリアン:コヴェナント』は、
エイリアン・シリーズの信仰者にとっては、まさに金字塔となる作品です。

ご存じのように、『エイリアン』は第一作のみでリドリー・スコットの手を離れ、
『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロンによる
『エイリアン2』を経てからは、vsプレデター二作品まで、
どちらかというと「SFパニックアクション」という娯楽路線へ突っ走って来ました。
それはそれで、面白く観させていただいてきたのですが、
『エイリアン』の原点である「SFホラー」という位置づけに、
いよいよリドリー・スコット本人の手によって立ち返ることとなりました。

そんな原点回帰への期待を抱いていたところに、
『人類の起源』とか、かなりどうでもいいことを謳い文句にして登場した
前作『プロメテウス』に、そこそこガッカリさせられたあなたも、
ご安心ください。今回は『エイリアンの起源』であります。
やっとエイリアンフリークの期待通りの世界観に戻ってまいりました。

そもそもエイリアンの前日譚でありながら、
なぜに人類の起源を描こうとしたのか?
いかにリドリー・スコット好きであっても、少々理解ができませんでした。
そんな不満やら疑問やらを抱えて今作の鑑賞に臨めば、
そんな疑念もスッキリ爽やか、便秘の後の爽快感に似た、
晴れやかな気分になれることと存じます。

んで、これは私の想像なのですが、
『プロメテウス』制作中に、今作のアイデアが浮かんでしまったのでは?
というのが、私の推察です。
『プロメテウス』公開前にすでに続編の制作が決定していたことからも、
途中で大きく脚本を修正したように思えてなりません。
そもそも一本だったものを2つに別けたのか、
一本だったものに、あとから続編を追加するようにオチを書き換えたのかは
分かりませんが、それで、“あの” 歯切れの悪さに至ったのではないか?と。

いずれにせよ、『プロメテウス』と、『エイリアン:コヴェナント』、
両方観てはじめて一本に繋がる物語になっております。
制作サイドの意図と、興行側の思惑が、妙なところで一致してしまう
このテの2個セット、最近多いですね。

というわけで、エイリアン好きにとっては、
そんな消化不良が改善されることに加えて、
エイリアン誕生の秘密が解き明かされることになるので、
言ったような、格別の爽快感が得られるのですが、
そもそもエイリアンのルーツに興味のない方には「それがどうした」と、
思われても仕方がありません。

前作が人類の起源という、壮大な謎(に挑戦して負けてましたが)を
描こうとしていましたが、それは今作にも地続きで描かれており、
本作で明らかとなる、
「エイリアンという生物兵器が、如何にして生まれたのか?」
という疑問への答の中には、
知恵と知識を得た者のもつ、傲慢なエゴと、
それによって行われる神への冒涜への、強い批判が含まれています。

『プロメテウス』の中で「なぜあなた方は、私を作ったのですか?」と、
アンドロイドのデヴィットが乗組員に質問するシーンで、
「単にできたから」と、その乗組員は冗談で返しますが、
冗談を解さないアンドロイドは、
「その台詞をあなた方の創造主が、
 あなた方に言ったら傷つきませんか?」と真顔で返します。
この台詞の真の意味について、今作では「これでもか」というほど残酷な、
これ以上ない絶望として描かれており、
そういった部分は、エイリアン好きでなくても、
観る者すべてを心底まで考えさせるようにできています。

突然ですが、正直私は、昨今よく耳にする、「AI」なるものが嫌いです。

良い悪いではなく、嫌いです。
クローン人間が嫌いなのと同じ意味で、私はAIが嫌いです。
核爆弾と同様に、できるからと言って
作ってはいけない事、物のように思っています。
きっと、リドリー・スコットも同じように思っているではないかと感じて、
少し嬉しかったです。

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さておき、エイリアン好きからの素の感想をさせていただきますと、
まず、今作のエイリアンの動きは、まさにキレッキレであります。
一作目で、俳優が着ぐるみを着て演技していた事を思うと、
これは涙なくして語れません。

ただ、ほとんどアートと言って良いH.R.ギーガーが創造したクリーチャーは、
撮影技術的な理由から「見せたくてもあまり見せられない」という
葛藤を生み出し、それが逆に、絶妙な「寸止め感」「チラ見せ感」となり、
恐怖感を更に増幅させる結果となっておりました。
そんな恐怖感を、「全部見せ」の状態でも達成できるのですから
まさにCGさまさまであります。これぞ技術の進歩。
ある意味『ダンケルク』とは真逆の世界観。

いずれにせよ、そんな時代を経てきたエイリアン・シリーズだからこそ、
常に新しい衝撃の有り様を、見せ続ける責任があるのだと、
製作陣の強い意志を感じさせるところも、ファンとしては感激です。

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今作の主役はキャサリン・ウォーターストン演じるジャネット。

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キャサリン・ウォーターストンといえば、
近作では『ファンタスティック・ビースト』のティナ役が思い起こされますが、
それ故、この配役にも私はかなりの疑問を感じておりました。

しかし!

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観終わってみれば、誰もがシガニー・ウィーバーを思い起こすこと請け合い!
そう言えばシガニーも、当時は可愛い子ちゃんタイプでありました。
さすがはリドリー・スコット。初志貫徹。

そんな今作の “回帰” と “持続” の意思の顕れは、
例の、アトランダムに一画づつ表れる「AILIEN」独自の
冒頭のタイトル表示にも貫かれていて、
これもまた懐かしさと共に、あのタイトル表示が醸し出す、
第一作目を観たときの刷り込みのような深い記憶が蘇ります。

それと、今作でもリドリー・スコットさんは贅沢に、
否、豪華にシーンをカットしております。
毎作、DVDを買ってリドリーさんの解説付きで観直すと、
必ずお約束のように「テンポが悪い」とか、「物語の流れが淀む」とか言って、
公開版ではかなりのシーンをカットしていたことが分かります。

『ブレードランナー』では、「長すぎる」という配給側の意向で、
公開版を泣く泣くカットしたリドリー・スコットでしたが、その結果、
『ディレクターズカット』や、『ファイナルカット』版の登場という、
伝説を生み出すことになりました。
今では、こだわるが故に撮り過ぎてしまうシーンを、
自らカットするようになったわけで、時間というのは、
頑固な人の考えや意志まで変えるんですね〜〜これまた興味深い。

もちろん今作でも、そんなリドリー節は炸裂していて、
すでに劇場公開前からカットされたシーンが公開されています。



ちなみに、こちらの動画で「船長」と呼ばれているのは、
ご存じジェームズ・フランコさんですが、
なんと、本編にはほとんど出てきません・・・・ごっそりカットされてます。
有名俳優の登場シーンをこれほど大胆にカットしてしまうとは、
ケンカでもしたんじゃないのか?と心配になるほど、アッサリ逝かれてます。
リドリーさん、さすがっす!



こちらの動画は新型アンドロイドのテレビCM風を装っておりますが、
そういう意図で撮られたシーンでないことは、本編を観れば一目瞭然。
もっと別の深い意図で撮られていたことが分かります。
このシーンは入れておいても良かったのではないかと、
私は思うのですが。

というわけで、エイリアン好きなら絶対観るべし!ですが、
一般の方の場合 オススメ度:70
  

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2017.09.22 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ワンダーウーマン

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全米のみならず、世界各国で大ヒット飛ばしているという
『ワンダーウーマン』。
アメコミ映画全盛にあって、ほとんど初めてと言っていい
女性スーパーヒーローの登場であります。

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その名前は知ってはいても、
どういった素性なのか、まったく知らなかった私にとって、
彼女が唐突に登場してきた『バットマン vs スーパーマン』では、
映画の冒頭から、2大ヒーローがなぜ闘わなければならないのか?を
かなり丁寧に、そして慎重に描いていたのに、それらをぶち壊すように、
おもいっきり不自然に、なのに堂々と、裸同然の格好で暴れ回るこの娘を見て、
口があんぐりしてしまったわけだが、
今作がいよいよその素性を知ることとなる、初めての単独作品というわけだ。

もちろん、この秋に公開されるDC版アベンジャーズである、
『ジャスティス・リーグ』への布石でもあるので、
そういった意味でも見逃せない作品であります。

しかして、観てみれば、今作がどうしてこれほどの大ヒットを飛ばしているのか、
一目瞭然でありました。

神々によって、俗世間から隔離されてきた女性だけの島で育った、
アマゾン一族のプリセンスであるダイアナ(ワンダーウーマン:ガル・ガドット)。
女性だけの島に存在する、「たった一人の子供」という
出生の秘密を背負いながら、平和のための使者として存在するアマゾン族の
正統なプリンセスとして、大切に、そして強く育てられていた。

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そんなダイアナの元に、大戦下のアメリカ軍兵士が、
戦闘機と共に結界を破ってアマゾン族の島に不時着する。
救出された、ナチスドイツの毒ガス攻撃の情報を追う、
諜報部員であるスティーブ(クリス・パイン)とともに、
大量破壊兵器の攻撃を防ぐため、ダイアナは一人、島を離れて戦いに向かう・・・
というのが物語の大筋。

その中で、都会はおろか、男性さえ見たこともない若い女性が、
様々な発見を繰り返すコミカルな展開もあり、そういった部分も面白い。

そうして、私も知りたかった「なぜにこの娘っこはこんなに強いの??」という
彼女の出生の秘密など、その正体も明かされていくという、
王道のコミックヒーロー物であり、壮大な歴史アクション大作ともなっている。

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そんな、底抜けに強いのだが、ちょっと俗世間には疎い、
強さと愛らしさを持ち合わせた女性像に、
このガル・ガドット以上の存在はいないだろう。
それほどに、今作の魅力のほとんどすべてはこの女性にあると言っていい。

ただ。
元ミス・ユニバース・イスラエル代表であったガル・ガドットの、
この役を利用した(ように思える。
もしくは政治的に利用しようとする者がいると感じさせる)
母国イスラエルについての発言には気を付けたいところだが・・・

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監督は、2003年公開の、シャーリーズ・セロン主演『モンスター』で
長編映画監督デビューを果たした女性監督のパティ・ジェンキンス。
ワンダー・ウーマンは、そもそも当時の女性の地位確立というテーマも
持ちながら誕生してきた背景もあるので、
今作でも女性からの支持を得ることも大きな目的としてあったようだ。
そういう意味でも、今作は、スタッフ、キャスティング共に
大成功だったと言えるだろう。

女性が主役だということで、良い意味で今までにない作風を確立しおり、
アメコミ映画はあまり観られないという方でも、
休日の午後に、単純に肩の力を抜いて楽しめる、
とても映画らしい映画に仕上がっている作品だと思います。

オススメ度:80



さて、『マン・オブ・スティール』から長くこの世界観の中心にあり、
『バットマン vs スーパーマン』に続き、『ジャスティス・リーグ』の監督も
務めていたザック・スナイダーだが、家族の不幸によって、
『ジャスティス・リーグ』の監督を途中で降板してしまうことになった。
ほとんどの撮影が、すでに完了していたことから、
公開を延期して復帰を待つ事も検討されたが、ザック自身の意志によって、
アベンジャーズシリーズの監督でもあったジョス・ウェドンが、
そのバトンを受け継ぐことに決まったようだ。

ベン・アフレック主演・監督で製作が進んでいた『バットマン』単独作品でも、
主演と監督という重積を追いかねるという理由から、
主役、プロデューサーは継続しながら、途中で監督を降板し
『猿の惑星:新世紀』のマット・リーヴスに監督交代が決定した矢先だったので、
とんとん拍子に新しい作品をリリースし続け、興行的にも成功を繰り返す
マーベル作品とは裏腹に、なんともバタついているDCコミックであります。

そんなDCコミックにあって、北米興収3億8900万ドルに到達し、
今夏公開された大作映画のなかでトップの成績を叩き出している今作の大成功を経て、
『ワンダーウーマン』の次回作は、すでに2019年12月の全米公開が決定している。
  

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2017.09.15 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

『ダンケルク』IMAX試写会

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9月9日、今週土曜から公開の『ダンケルク』ですが、
IMAX版試写会で、一足お先に観ることができました!

こうした試写会の目的は、昨今ではSNSなどでの拡散効果を狙うものだが、
この『ダンケルク』に関しては、そんな拡散効果が、
最終的な興行収入を大きく左右することは明らかだ。

今作は、戦争という残酷で冷徹な世界を、何が何でも生き抜いていく
人間の決意と、その姿を描いたシンプルでいてかなり重厚な内容なので、
単なる戦争映画として取られてしまうと、
女性を含めた多くの方々に観ていただけないことになってしまう。

戦争映画という、ある意味マニアックな題材でありながら、
戦争という舞台だからこそ、映画だからこそ伝えられること、
そして、劇場でしか体感することのできない物語を生み出すことに、
徹底的にこだわって創られた、とても希有な作品であることを、
多くの方々に知っていただくことがとても重要になる。そういう作品だ。

最近では、こういったほとんど「実験的」とも言えるような種類の作品に
大きな資金をつぎ込むことは、リスクも高く、なかなかないのですが、
『ダークナイト』三部作や、ディカプリオ主演の『インセプション』などの
成功を背景に、「今一番新作が観たい映画監督」という地位を確立し、
これまたマニアックな、「ブラックホール」を題材にした
インターステラー』を興行的にも成功させた、
クリストファー・ノーラン監督だからこそ、
博物館に収蔵されていたホンモノの駆逐艦を引っ張り出して撮影したり、
日本円にして、5億円にも及ぶ巨費を投じて完成させた、
飛行可能な戦闘機のレプリカでの撮影が可能となり、
徹底的にリアリズムを追求して完成させることのできた、
“完全体感型” 戦争映画、それがこの『ダンケルク』であります。

そして、ノーラン監督は、デジタル撮影が全盛の現代においても、
フィルムだけが描き出せる世界観を信奉する映画監督としても有名で、
一時期倒産しかけたコダック社を救ったとさえ言われている人物。

「生と死の狭間」とは良く言うセリフですが、
その数センチ、数秒が、まさに生と死を別けてしまう、
運命と言うにはあまりに過酷すぎる、戦場という極限の状況を、
全編フィルムで撮られた今作の映像の放つ迫力や、美しさ、
そして、ドルビー・デジタル・サラウンドによる音像効果によって、
見たこともないはずの戦場の空気感を、
まるで遺伝子に残された記憶を蘇らせるように、観る者に伝えてくる。

そうして観客を、客観視する傍観者ではなく、現実の戦場に否応なく放り込み、
戦場の「内側」に居るからこそ感じる事のできる、
人間のもつ、勇気や団結力、そして何より、生き抜こうとする生命の強さを、
観る者の “実感” として、植え付けるための演出が、
99分間の全編に渡り施されている。

そんなこんなを、一人でも多くの方々に伝えられなければ、
この作品の成功は望めない。と、
配給元の宣伝部の方のみならず、観終われば誰もがそう思うことでしょう。

そういう意味もあって、大々的な試写会を敢行したことは想像に難くない。
予告編を含む、動画サイトなどにあげられる宣伝用の動画に、
有名人の感想を展開しているのはそのためだろう。

それほどに、ネタバレ以前の問題として、
この映画にはバラすネタがそもそもない。
もしバラすとしたら、観客を引き込むための、心憎い演出方法に関して、
お教えすることになってしまうだろう。
それほどに、シンプルでいて衝撃的な、
悲惨な戦場からの脱出劇を描いた映画なのであります。

現在『関ヶ原』も公開されているが、
日本人にとって関ヶ原の合戦とは、すでに説明の要らない史実だ。
この『ダンケルクの戦い』も、イギリス人やヨーロッパ諸国の方々にとって、
関ヶ原レベルの有名な戦いだったのだそうで、
だからこそ、この救出作戦に関する細々とした説明を一切せずに、
いきなり戦場のど真ん中から物語がスタートすることが可能になっている。



というわけで、観に行かれる方は、
先にこの林先生の「ダンケルク講座」を
受講してから行かれることを強くオススメする。

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もちろんネタバレに繋がるようなことは言えないが、
あえて、ごく個人的な感想をさせていただくなら、
わたくし的に今作での最大の見所は、
「スピットファイヤ」と「メッサーシュミット」という、
英・独の誇る戦闘機が魅せる、迫力の空中戦であります。

トム・ハーディ演じるイギリス人パイロットの視点で描かれる、
コクピットからの景色や、ロールス・ロイス製エンジンの、
まさに身震いするようなサウンド、そして、まるで呼吸するような振動。

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ふだんから水平対向エンジンを愛する者として、
いつも自分の股の下から伝わって来る、あのサウンドや振動が、倍加して
頭の先から爪の先まで、耳の穴から毛穴まで、それこそ全身から伝わってくる、
もの凄い映像体験となりました!

誰にでも安易にオススメできる作品ではありません
(特に心臓に疾患をお持ちの方は、鑑賞を避けるべき)が、
少しでも興味を持たれたら、ゼッタイに劇場で、
しかもIMAX版の鑑賞をオススメいたします!
ビデオでは劇場の1/10も、その迫力が伝わらない作品です!

私も次はお金を払って、もう一度IMAXで観ておこうと思います!

(劇場鑑賞に限り)オススメ度:90

というわけで、すでに先週から公開されております
『ワンダー・ウーマン』のお話は、来週金曜にお届けしようと思います!
  

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2017.09.08 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

ベイビー・ドライバー

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ジェイソン・ステイサム主演の『トランスポーター』など、
高い運転技術で犯罪者を逃がしたり、
ヤバい荷物を運んだりする、いわゆる “運び屋” の物語は多くあるが、
この『ベイビー・ドライバー』も、それらと同じ種類の映画だとだと思ったら、
それは大きな間違いだ。

今作は、脚本よりも先に使用楽曲が決められたというほど、選び抜かれた音楽が、
まるで華麗なステップでダンスを踊るようにストリートを疾駆するクルマと、
ヒリヒリするように危険でスリリングなストーリー展開とクロスオーバーする、
クールな映像体験として完成されている。

かといって、ミュージックビデオのような映像なのかと言えばそうではなく、
それらはあくまでもストーリー自体を疾走させるための仕掛けでしかない。
怖い物知らずの天才的ドライバーでありながら、心やさしい青年に、
頭のネジが2〜3本ぶっ飛んだサイコパスな犯罪者たちの織りなす、
まさにテンポの良い愛憎劇を加速させるための、憎いほどクールな演出だ。

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ベイビー役を演じるのは、これが初主演作となるアンセル・エルゴート。
彼のフレッシュさが、子供のような無邪気さと、初々しさを持ちながら、
それでいて天才肌の超スゴ腕のドライバーという、特大のギャップを持つ、
「ベイビー」の存在感を強く印象づける。
このギャップこそが、この物語の核心なので、
彼の起用は大成功と言っていいだろう。ものすごいハマリ役だ。

超クールでサイコパスな犯罪者を演じる、
ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハムといった
豪華な俳優陣がそんなフレッシュな才能の脇を固め、
天使と悪魔、天国と地獄の強烈なコントラストを生み出し、
騙し合い、殺し合いの、緊迫の逃亡劇を彩っていく。

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とにかく最高にクールでいて、手に汗握る展開は、まさに必見の一言!
クルマ好きも、サイコな犯罪アクション好きも、ラブロマンス好きも、
もちろん音楽好きも、まとめてかかって来い!の
テンコ盛りオフビート・ムービーです!

オススメ度:100!
  

テーマ:洋画 - ジャンル:映画

2017.09.01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

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埼玉のへそ曲がり

Author:埼玉のへそ曲がり
オートバイと
スノーボード。
近ごろ波乗り。

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